「整理ダンスって、中身が洋服だから軽いし、中身そのままで運んでくれるのよね?これで梱包が楽になるわ!」と思ってませんか?

こんにちは。引越し業者のスタッフとしても、「整ダン(注・整理ダンスのこと)は身入りで運んだほうが楽なのになぁ…」と感じていた、元引越し業者スタッフの管理人です。

残念ながら、すべての引越し業者が、整理ダンスを中身入りでそのまま運んでくれるわけではありません。

ですから、原則としては、中身の洋服は、すべて取出して梱包します。

この記事では、そのあたりの事情も含めて、引越しでの整理ダンスの準備と注意点について解説していきます。

整理ダンス・チェストとは、引き出しだけのタンスです。大型のものは、上下に分離するものもあります。

整理ダンス・チェストは、一般家庭の家具のなかでは、比較的小さめのものです(婚礼家具は別ですが)。

冷蔵庫や和ダンスなどに比べても、重くない家具です。

ただし、背が高いハイチェストや幅の広い整理ダンスは、壁に接触いて、キズやヘコみの原因となることもあります。

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整理ダンス・チェストの中身(洋服)は原則として空にする

チェスト

整理ダンス・チェストは中身入りでそのまま運べない

整理ダンス・チェストは、引越し業者の営業員から、中身入りでもいいという許可がない限り、中身を取出して空にしてください。

整理ダンス・チェストは、本体そのものはそれなりに重いものです(もちろん、冷蔵庫や和ダンスほどではありません)。

これに、中身の荷物の重さが加わると、中身がすべて洋服だったとしても、相当の重さになります。

あまりイメージが湧かないかもしれませんが、ひとつひとつの洋服は軽いものですが、タンスに入っている量となると、途端に重くなります。

このように、中身入りのタンスは、単に「重い」という理由で、中身入りで運ぶことができません。

また、中身入りで運ぶことには、いろんなリスクやデメリットがあります(詳しくは後ほど解説します)。

中身の洋服は大型~中型のダンボールに梱包する

このような事情があるため、整理ダンスは・チェストの中身の洋服は、すべて出して、ダンボールに梱包してください。

梱包に使うダンボールは、大型か中型のダンボールです。食器や本を梱包する小型のサイズのダンボールは使いません。

参照:洋服などの梱包に使う―中型のダンボールの引越しでの使い方と注意点

参照:重い荷物は入れてはいけない―大型のダンボールの引越しでの使い方と注意点

洋服の梱包のしかたは、タンスに入っている、畳まれた状態で、そのままダンボールに入れるだけで大丈夫です。

ダンボールには整理ダンス・チェストに入っていた位置まで記入する

なお、洋服を梱包したダンボールには、洋服であることを記入してください。

同時に、整理ダンス・チェストに入っていた位置も記入します。

具体的には、どの引き出し(例:上から2番目)のどの位置(例:左・中央・右)に入っていたのかを記入してください。

これは、実際に引越し業者のスタッフが使っているテクニックです。

こうすることで、ダンボールを開梱して整理ダンス・チェストに洋服を戻すときに、スムーズに作業することができます。

女性はダンボールに「下着」と書いてはいけない

なお、女性用の下着を梱包する場合は、絶対に「下着」(下着を連想させる書き方も)と書いてはいけません。

というのも、女性ものの下着が入ったダンボールは、盗まれたり、横領されたりするリスクがあるからです。

ですから、下着が入ったダンボールには、他人が見ても女性ものの下着が入っているとわからないように記入しておいてください。

具体的には、「洋服」「整理ダンス上から2番目・中」のような書き方にするか、「雑貨U」などの「暗号」のような書き方にしてください。

参照:引越しの時間が劇的に減る!?―ダンボールに記入する4つの必要事項

参照:対策まで徹底解説!引越しで起こる6つの犯罪(窃盗・横領・ストーカー・つきまとい・盗聴・住居侵入)

中身入りで整理ダンス・チェストを運ぶ場合のリスク・デメリット

注意喚起

引越し業者によっては中身入りで整理ダンス・チェストを運んでくれる

引越し業者によっては、中身入りで整理ダンス・チェストを運んでくれるところがあります。

実は、現場の引越し業者のスタッフとしては、わざわざ整理ダンス・チェストとその中身のダンボールを別々に運ぶのは面倒です。

また、トラックの荷台でも余計なスペースを取られてしまいます。

ですから、中身入り整理ダンス・チェストと洋服を一気に運ぶほうが、都合がいい場合もあります。

このため、引越し業者も、案外気軽に引き受けてくれる可能性もあります。特に小さいサイズのチェストであれば、中身入りで運んでくれます。

見積もりの際には、引越し業者の営業員に相談してみてください。

引越し業者の営業員は、訪問見積もりのときに、整理ダンス・チェストの現物を見て(場合によっては持ってみて)、中身入りで運べるかどうか、その場で答えてくれます。

【リスク・デメリット】中身入りで運ぶと最悪の場合バラバラになる

整理ダンス・チェストは倒したり起こしたりして運ぶ

整理ダンス・チェストを中身入りで運ぶリスク・デメリットは、タンスが「歪む」ことです。

整理ダンス・チェストを運ぶ場合、よほどサイズが小さいものでない限り、そのまま水平に運ぶことはありません。通常は、いったん横に倒して運びます。

また、階段、部屋の出入り口、階段の上り口・下り口、曲がり角で曲がりきれない場合は、起こして曲がり角を曲がったうえで、再度横に倒して運びます。

このように、整理ダンス・チェストは倒したり起こりたりの90度回転を何度もしながら運びます。

中身入りの整理ダンス・チェストは重いから「歪む」

中身が空の状態であれば、こうして倒したり起こしたりしても、整理ダンス・チェストにはほとんど影響はありません。

ただ、中身入りの場合は、そうはいきません。すでに述べたように、中身入りの整理ダンス・チェストは非常に重いものです。

こうした重い整理ダンス・チェストを倒したり起こしたりして回転をかけると、歪んでしまいます。

老朽化した整理ダンス・チェストや、強度が弱いDIYで作ったものであれば、引き出しが開きづらくなったり、開かなくなることがあります。

最悪の場合、タンスそのものがバラバラに分解してしまったりすることもあります。

整理ダンス・チェストを中身入りで運んでもらうときは、このようなリスクをご承知のうえ、運んでもらってください。

参照:タンスがバラバラに分解する!?引越しでタンスや家具の中身を空にするべき理由

貴重品は取出してお客さまが運ぶ

なお、中身入りで運ぶ場合であっても、貴重品だけは取出して、ご自身で運んでください。貴重品の具体例としては、現金、有価証券、宝石貴金属、預金通帳、キャッシュカード、印鑑などです(標準引越運送約款第4条第2項第1号)。

これらは、引越し業者が運んでくれないものです。

第4条(引受拒絶)
(第1項省略)
2 荷物が次に掲げるものであるときは、当該荷物に限り引越運送の引受けを拒絶することがあります。
(1)現金、有価証券、宝石貴金属、預金通帳、キャシュカード、印鑑等荷送人において携帯することのできる貴重品
(2)火薬類その他の危険品、不潔な物品等他の荷物に損害を及ぼす恐れのあるもの
(3)動植物、ピアノ、美術品、骨董品等運送に当たって特殊な管理を要するため、他の荷物と同時に運送することに適さないもの
(4)申込者が第8条第1項の規定によるその種類及び性質の申告をせず、又は同条第2項の規定による点検の同意を与えないもの
出典:国土交通省「標準引越運送約款」

このような貴重品は、梱包せずに、手荷物として運ぶか、ご自身の責任で運んでください。

また、これらの貴重品は、引越し業者が貴重品であると知らずに運んだ場合は、補償の対象外となることがあります(標準引越運送約款第24条第1項)。

第24条(引受制限荷物等に関する特則)
1 第4条第2項各号に掲げる荷物については、当店がその旨を知って引き受けた場合に限り、当店は、当該荷物の滅失、き損又は遅延について、損害賠償の責任を負います。
(第2項省略)
出典:国土交通省「標準引越運送約款」

このため、空だと思っていたタンスに貴重品があった場合に、その貴重品が損壊・滅失してしまったときは、補償してもらえない可能性があります。

整理ダンス・チェストを中身入りで運ぶ場合でも女性用の下着は取出して梱包する

またしても、女性の下着の話ですが、整理ダンス・チェストを中身入りで運ぶときは、下着は取出してダンボールに梱包してください。

本当はあってはならないことですが、整理ダンス・チェストに下着を入れた状態で運んでもらうと、下着だけ抜き取られる事があります。

このため、面倒かもしれませんが、女性用の下着は、ダンボールに梱包してください。

なお、すでに述べたように、ダンボールには「下着」とは書かずに、下着とはわからないように書いてください。

整理ダンス・チェストの角の接触によるキズや床・壁のキズ・ヘコみに注意

団地

特に背の高いハイチェストによる接触事故に注意

整理ダンス・チェストは、一般家庭の荷物としては、さほど大きくはありませんし、中身が空であれば、比較的軽い家具です。

このため、和ダンスや冷蔵庫のように、重くて大きい(幅が広い・背が高い)家具・家電製品に比べて、事故のリスクは低いです。

ただ、それでも、婚礼家具の整理ダンスはそこそこ重いですし、ハイチェストなどは比較的背が高い家具であるため、事故はあります。

特に、室内階段、団地・公営住宅・公営住宅の階段、廊下などの狭い箇所では、壁に整理ダンス・ハイチェストの角が接触することがあります。

このため、壁にキズ・ヘコみができることがあります。また、逆に整理ダンス・ハイチェストの角が欠けたりヘコんだりすることもあります。

婚礼家具の整理ダンスや幅広の整理ダンスによる床のキズに注意

なお、婚礼家具の整理ダンスや、幅の広い整理ダンスは、意外に階段や廊下を通しづらいことがあります。

このような幅広の家具を運ぶ場合、引越し業者のスタッフは、階段や廊下の曲がり角で、家具を床に置いて方向転換します。

この際、重い整理ダンス・ハイチェスト(特に中身入りの場合)は、丁寧におかないと、床にキズがつくことがあります。

ですから、よく家具を置く場所、具体的には、以下の場所に注意してください。

  • 廊下の曲がり角の壁・床
  • 部屋の出入り口の壁・床
  • 玄関の壁・床
  • 階段の登り口(上り口)と降り口(下り口)の壁・床
  • 階段の踊り場

古い整理ダンス・チェストの場合は角の塗装がはげることも

湿度

引越し業者の梱包材で角の塗りがはげる

古い整理ダンス・チェストは、角の塗装がはげかかっていることがあります。

このような状態で、引越し業者のスタッフが整理ダンス・チェストを梱包するときは、角に負担がかかってしまって、塗装がはげることがあります。

ベテランの引越し業者のスタッフは、塗装が剥げないように配慮して梱包をしてくれます。

ただ、こうした事情を知らない経験が浅いスタッフが、よく家具の角の塗装を剥がしてしまいます。

ですから、古い整理ダンス・チェストは、特に注意してください。

古くない整理ダンス・チェストでも状態によっては角の塗装がはげる

なお、古くない整理ダンス・チェストであっても、湿気や塗装のしかたによっては、意外に塗装がはげてしまうことがあります。

特に、湿気のこもりやすい部屋の角などに、隙間なく置いていた整理ダンス・チェストにありがちです。

こうした状態で長年置かれていると、水分を吸ってしまって、塗装がはげやすくなることがあります。

洋服ダンスや和ダンスのような高価な家具とは違って、安価な整理ダンス・チェストは、塗装が簡素な場合も多く、塗装が剥げやすい傾向があります。

このため、特に湿気の多い部屋に置いていた場合は、比較的新しい整理ダンス・チェストであっても、角の塗装に注意してください。

【Q&A式】まとめ

いかがでしたか?最後にもう一度、整理ダンス・チェストの注意点について確認しておきましょう。

整理ダンス・チェストは中身入りで運んでくれないの? 原則としては、引越し業者は、中身入りで運んでくれません。ただし、整理ダンスのサイズによっては、中身入りで運んでくれる引越し業者もいます。詳しくは、見積もりの際に営業員に確認してください。
どうして引越し業者は中身入りで整理ダンス・チェストを運んでくれないの? 中身入りで重くなっている整理ダンス・チェストを運ぶと、倒したり起こしたりしたときに、歪んでしまって、引出しが開きづらくなったり、開かなくなったりするからです。最悪の場合、バラバラに分解してしまいます。
整理ダンス・チェストの中身の梱包のしかたは? 中身の洋服は、タンスの中に入っている、畳まれた状態で、ダンボールに梱包してください。使うダンボールは、大型~中型のダンボールで、食器や本の梱包に使う小型のダンボールは使いません。
整理ダンス・チェストの中身が梱包されたダンボールの書き方は? 「洋服」などと記入したうえで、整理ダンス・チェストのどこに入っていたかも記入します。例えば、「上から2番目・中央」などです。

なお、女性用の下着が入ったダンボールは、盗難防止のため、絶対に「下着」と書いてはいけません。

引越し業者が整理ダンス・チェストを中身入りで運んでくれる場合の注意点は? 貴重品は、取出してお客さまご自身で運んでください。貴重品が整理ダンス・チェストに入っていると、引越し業者が運んでくれないか、運んでくれたとしても、紛失した場合は補償の対象外になることがあります。

また、女性余の下着は、盗難・横領防止のため、取出してダンボールに梱包してください。

整理ダンス・ハイチェストの接触事故はどこをチェックすればいいの? 基本的には、室内階段、団地・公営住宅・公営住宅の階段、狭い廊下などで、壁への接触事故が起こりやすいです。

また、部屋の出入り口、階段の上り口・下り口・廊下の曲がり角、階段の踊り場なども、整理ダンス・チェストの接触によって、壁や床にキズやヘコみができやすい場所です。

この他に気をつけるべき整理ダンス・チェストの事故は? 古い整理ダンスやチェストは、引越し業者の梱包作業で角の塗装がはげることがあります。

また、比較的新しい整理ダンス・チェストであっても、置かれていた状態によっては、角の塗装がはげます。

管理人の勤務先だった引越し業者は、タンスは中身入りでは運ばない方針だったため、実は、管理人は、あまり中身入りのタンスを運んだことがありません。

支店のいろんな方に話を聞いてみても、この「身入り」のタンスを運ぶかどうかは、引越し業者によって、ほんとうに対応が分かれるようです。

安全重視で、多少手間がかかっても、中身をダンボールに梱包するか、リスクを取って中身入りで運ぶかは、引越し業者を選ぶお客さま次第です。

ぜひ、複数の引越し業者から一括見積もりサービスで見積もりを依頼してみて、中身入りで整理ダンス・チェストを運んでくれるかどうか、営業員に聞いてみましょう。