「引越しで冷蔵庫みたいな重い荷物を床に置いても、キズとかヘコみにならないの?」と不安になっていませんか。
こんにちは。冷蔵庫の下の側を持つ際には、いつも緊張していた、元引越し業者スタッフの管理人です。
引越し業者は、引越しの作業を始める際に、引越し元(旧居・積地)でも、引越し先(新居・卸地)でも、必ず床の養生をします。
ですから、そんなに簡単に床にキズ・ヘコみ・汚れがつくことはありません。
ただ、それでも、冷蔵庫などの重い荷物を落としてしまったり、養生していない場所に荷物を置いたりすると、キズやヘコみがついてしまいます。
また、畳などは、汚れた靴下で歩き回ると、汚れてしまうこともあります。
もちろん、こうした場合、引越し業者は、お客さまに補償しなければなりません。ただ、引越し業者も、なんでもかんでも簡単に補償には応じてくれません。
スムーズに引越し業者と交渉するためには、事前の準備が重要となります。
そこで、この記事では、万が一、床にキズ・ヘコみ・汚れができても、簡単に引越し会社に補償をしてもらえるコツについて解説していきます。
【ポイント1】引越し業者は必ず床・階段の養生をする
床・階段は荷物を必ず「置く」
引越しでありがちな床の事故は、重い荷物、特に冷蔵庫を置いたときのヘコみです。
引越しの作業では、床に荷物を置かずに作業できません。
もちろん、ベテランのスタッフは、床に重い荷物を置くと、床がヘコむ可能性があることをよく知っています。
経験を積めば積むほど、引越し業者のスタッフは、なるべく荷物は床に置かないように運ぼうとします。
ただ、ベテランのスタッフであっても、荷物のサイズと建物の構造上、方向転換する際には、必ず荷物を床に置かなければならない場所があります。
冷蔵庫がある引越しは必ず床のキズ・ヘコみのリスクがある
この、荷物を「必ず」置かなければならない、というのが、床のキズ・ヘコみの事故の原因の特徴です。
冷蔵庫のような重い荷物がある引越しでは、どんなベテランのスタッフが扱ったとしても、床のキズ・ヘコみのリスクがある、ということです。
例えば、壁への荷物の接触の事故では、どんな引越しでも、荷物が「必ず」接触する、ということはありません。
壁の事故は、引越し業者のスタッフが「接触しない」という対処である程度リスクを回避できますが、床の事故は、そうはいかないのです。
引越し業者は床・階段の養生は柔らかいマットでする
このように、荷物を「必ず」置くという特殊な事情があるため、引越し業者は、床や階段を養生します。
参照:事故防止のためには必須の作業―引越し元(旧居・積地)での養生作業の注意点
参照:「養生しない」はあり得ない―引越し先(新居・卸地)での養生作業の注意点
この養生ですが、ゴムのすべり止めがついた、柔らかい布製のマットを敷くことで、床や階段を保護します。
本来は、もっと硬い材質のもので養生すれば、もっと床や階段のキズやヘコみは減らせるのかもしれません。
ただ、廊下や階段の形状が、建物によって全然ちがうため、現状では、布製のマットでの養生が限界です。
【ポイント2】引越し業者の養生があっても床のキズ・ヘコみ・汚れはある
「傷」は引越しトラブル「実質第1位」
このように、比較的柔らかい布製のマットで養生をするため、意外に衝撃が床や階段に伝わりやすく、あっさり事故が起こります。
せっかく引越し業者が床の養生をしても、油断はできません。
少し古いデータですが、国民生活センターが発行した『引っ越しサービスをめぐるトラブルの実態と利用のポイント』によると、表1の「引っ越しサービスに関しての主な相談内容」では、次のような相談件数となっています。
- 約束不履行 2,453件
- 傷 1,874件
- 紛失 1,861件
- 見積り 1,394件
(注)平成 13~平成18 年度に寄せられた相談の総件数である 11,784 件の内訳(マルチカウント)。
ご覧のとおり、このランキングでは、「傷」が引越しのトラブルの第2位となっています。
ただ、「約束不履行」というのは、非常に広い範囲のトラブルですので、「その他」のようなものでしょう。
ですから、実質的には、「傷」が引越しのトラブルの第1位といえます。
冷蔵庫などの重い荷物を「乱暴に置く」と床や階段はキズ・ヘコみができる
すでに述べたように、床や階段は、柔らかい布製のマットでしか養生しません。
布製のマットとはいえ、スリキズなど、ひっかくようなキズにはかなり効果がありますが、衝撃にはあまり効果がありません。
冷蔵庫や和ダンスなどの重い荷物を乱暴に置くと、床や階段はあっさりヘコんでしまします。
もちろん、引越し業者のベテランのスタッフは、このような事情をよくわかっているため、重い荷物を床や階段に置くときは、そっと丁寧に置きます。
ただ、経験が浅いスタッフはそうはいきません。
経験が浅いスタッフは重い荷物を「落とす」ことすらある
なにより怖いのが、経験が浅いスタッフは、乱暴に置くどころか、冷蔵庫や和ダンスを「落とす」ことがあります。
引越しの経験が浅いスタッフは、長時間重い荷物を持っていると、腕力が保たずに、荷物を落としてしまうことがあります。
特に、冷蔵庫や和ダンスのような重い荷物を落とした場合、ほぼ間違いなく、床・階段はヘコみます。
場合によっては、荷物本体のほうがヘコみます。
ですから、引越し業者のチームリーダーが、経験が浅いスタッフに無理をさせていた場合は、高確率で事故が起こります。
養生をしていない床・階段も要注意
引越し会社が持ってくる養生資材には、数に限りがありますので、引越しの現場の建物の床・階段の全部を養生することはできません。
ですから、引越し会社のスタッフは、事故が起こりやすい場所(後で説明します)を重点的に養生します。
当然ながら、養生をしていない床・階段は、ちょっとしたことでも、あっさりとキズ・ヘコみができてしまいます。
下手したら、ダンボールを直に置いただけでも、スリキズがつくことがあります。
大手引越し会社の中には、ダンボールを床に直接置くことを禁止しているところもあるくらいです。
ですから、特にフローリングや、フロアコーティングがされている床が養生されていない場合は、要注意です。
参照:事故はその時その場で補償交渉―引越し先(新居・卸地)の養生をはずす作業の注意点
雨・雪の日は畳の汚れに注意
引越しする建物に和室や畳が敷かれている部屋がある場合、汚れてしまうことがあります。
特に、雨の日や雪の日は、引越し会社のスタッフの靴下が濡れていることがあります。
濡れた靴下の状態で畳を踏むと、水分と一緒に、畳に汚れが移ってしまいます。
こうした事故を防ぐためにも、大手引越し会社の中には、引越し先(新居・卸地)で靴下を履き替えるサービスをしています。
また、チームリーダーによっては、いわゆる「巻きダンボール」を畳に敷いて、汚れないように配慮することもあります。
【ポイント3】引越し会社には補償に応じる義務がある
引越し業者は幅広い範囲の損害賠償責任を負っている
引越し業者は、「荷物の荷造り、受取、引渡し、保管又は運送に関し」、「荷物その他のものの滅失、き損又は遅延につき損害賠償の責任を負い、速やかに賠償」する義務があります。
「荷物その他のもの」とあるとおり、「その他のもの」には、床・階段・畳のキズ・ヘコみ・汚れも含まれます。
しかも、重要なポイントは、「注意を怠らなかったことを証明しない限り、」とある点です(標準引越運送約款第22条)。
標準引越運送約款第22条(責任と挙証等)
当店は、自己又は使用人その他運送のために使用した者が、荷物の荷造り、受取、引渡し、保管又は運送に関し注意を怠らなかったことを証明しない限り、荷物その他のものの滅失、き損又は遅延につき損害賠償の責任を負い、速やかに賠償します。
出典:国土交通省「標準引越運送約款」
引越し業者には「ミスをしなかった」ことを証明する責任がある
つまり、引越しの作業で、何か事故が発生した場合に、引越し業者にミスがあった、それともなかったのかは、引越し業者の方が証明する責任があります。
これを、法令用語では、「立証責任」といいます。
しかも、「注意を怠らなかったこと」=「ミスがなかったこと」を証明しないといけません。
「何かがないこと」を証明するのは、いわゆる「悪魔の証明」と言われるほど、非常に困難で、事実上不可能といっていいものです。
引越し業者は、それほど、引越しの事故について、重い責任を負っています。
【方法1】スムーズは補償交渉には「写真撮影」が重要
引越し業者は「ミスの有無」は論点にせず「引越しの事故かどうか」を論点にする
このように、引越し会社には、床・階段・畳のキズ・ヘコみ・汚れについて、非常に重い責任を負っています。
ただ、引越し会社としては、「当社にミスはありませんでした」とは主張しません。引越し会社の補償担当者は、その主張が無理なことを知っています。
ですから、ミスの有無は問題にせず、「そのキズ・ヘコみ・汚れは、引越しの事故によるものではなりません」と主張します。
つまり、そもそも「事故はなかった」と主張します。
こうなると、「事故があった」ことをお客さまのほうで立証しなければなりません。
キズがない床・階段の写真があれば引越し業者も補償を断りにくい
床・階段のキズ・ヘコみ・汚れが発生した場合、客観的な証拠写真があるのとないのとでは、補償交渉の進み方が、まるっきり変わってきます。
キズ・ヘコみ・汚れがない、作業前の床・階段の写真が残っていると、引越し業者も、そう簡単には言い逃れができなくなります。
こうした作業前の写真があれば、引越し業者は、「これはもともとあったキズ・ヘコみ・汚れだ」という主張はできなくなります。
そして、なるべく早く補償交渉に入ることで、「これは引越しの後の生活でできたキズ・ヘコみ・汚れだ」という主張もできなくなります。
必ず修正(捏造)できないフィルム式のカメラで撮影する
床・階段のキズ・ヘコみ・汚れの「証拠写真」は、必ずフィルム式のカメラで撮ってください。
スマホやデジカメで撮影した写真は、加工(修正、悪くいえば「捏造」)が簡単にできてしまいます。
なにしろ、壁・床にあるキズ・ヘコみ・汚れをちょっと消すだけで、まったくキズ・ヘコみ・汚れがない写真ができてしまいます。
さすがに引越し業者も、こうした写真を根拠に補償に応じる訳にはいきません。
逆に、今どき、わざわざフィルム式のカメラを用意してまで「証拠写真」を撮っておくと、引越し会社の補償担当者に対し、「こっちは本気だから」という、強いメッセージを送ることになります。
なお、フィルム式のカメラは、使い捨てカメラ、インスタントカメラ、チェキなどで大丈夫です。
事故多発地帯と証拠写真の撮影箇所候補
ただ、引越し元(旧居・積地)と引越し先(新居・卸地)のすべての床・階段・畳を撮影するのは、非常に手間がかかります。
ですから、実際には、以下のような、事故が起こりやすい場所を重点的に撮影してください。
- 廊下の曲がり角の壁・床
- 部屋の出入り口の壁・床
- 玄関の壁・床
- 階段の登り口(上り口)と降り口(下り口)の壁・床
- 階段の踊り場
- 台所の壁・床(特に冷蔵庫近辺の床)
これらの場所は、家具や冷蔵庫を搬出・搬入する際に、方向転換する場所=いったん置く可能性が高い場所です。
ちなみに、これらの場所は、壁もキズ・ヘコみができやすいので、併せて撮影しておくといいでしょう。
なお、時間やフィルムの数に余裕がある場合は、特に引越し先(新居・卸地)の階段を全面的に撮影してください。
引越し先(新居・卸地)の階段では、荷物を上に運ぶため、特に角の部分の接触事故(主にヘコみ)がありがちです。
2階に冷蔵庫や和ダンスを運ぶ予定がある場合は、特に気をつけてください。
【方法2】引越し会社との補償交渉はとにかく早く対処する
引越しを中断してでもその時その場で対処する
引越しの作業中に、床・階段・畳のキズ・ヘコみ・汚れ見つかった場合、必ず、直ちに、「その時その場」で対処してください。
時間が経ってしまうと、いつできたキズ・ヘコみ・汚れなのかがはっきりせず、引越し業者との補償交渉が難航することがあります。
特に床・階段・畳は、日常的に踏まれたり、物が落ちたりする場所です。
時間が経ってしまうと、引越しの作業によってできたたキズ・ヘコみ・汚れか、その後の生活のできたキズ・ヘコみ・汚れなのか見分けがつきません。
こうなると、引越し業者としても、そう簡単には補償交渉には応じてくれません。
ですから、たとえ引越しを中断してでも、床・階段・畳のキズ・ヘコみ・汚れが見つかったら、その時その場で、補償交渉に入ってください。
引越し終了後にキズ・ヘコみ・汚れが見つかった場合はすぐに連絡する
このように、床・階段・畳のキズ・ヘコみ・汚れは、なるべく引越しの現場で、その時その場で対処するべきです。
ただ、実際には、床・階段のキズ・ヘコみは、(言い方が悪いですが)「現行犯」でもない限り、まず気がつきません。
ですから、床・階段のキズ・ヘコみが発覚するのは、たいてい引越しが終わった後になります。
すでに述べたとおり、引越し先(新居・卸地)の床・階段・畳のキズ・ヘコみ・汚れについては、引越し業者の作業によるものと、お客さまの日常生活によるものと区別がつきません。
このため、時間が経てば経つほど、引越し業者は、(そのキズ・ヘコみ・汚れは、お客さまの引越し後の生活でできたものでしょう?)と疑います。
こうなると、引越し業者との補償交渉は、難航します。
ですから、引越しの後で床・階段・畳のキズ・ヘコみ・汚れが見つかった場合は、とにかく早く、引越し会社に連絡をするべきです。
【方法3】キズ・汚れ・ヘコみの確認を徹底する
キズ・ヘコみ・汚れに気づかなければ補償交渉に入れない
このように、床・階段・畳のキズ・ヘコみ・汚れの補償交渉は、なるべくその時その場で、少なくともなるべく早くしなければなりません。
時間が経てば経つほど、引越し会社は、補償には応じてくれなくなります。
このため、お客さまとしては、いかに早く床・階段・畳のキズ・ヘコみ・汚れに気づけるかどうかの勝負になります。
そもそも、キズ・ヘコみ・汚れに気づかなければ、補償交渉に入ることすらできないのです。
引越し作業終了後から徹底した「検査」をする
早く床・階段・畳のキズ・ヘコみ・汚れに気づくためには、もちろん、早く床・階段・畳の確認をすることが重要です。
では、どのタイミングで確認をするのかといえば、「床・階段・畳の養生をはずした直後から」です。
引越し会社のチームが帰った後では、遅いくらいです。
養生をはずした後、引越し会社のチームは、すぐには移動しません。しばらくは、移動のための準備や片付けをしています。
ですから、この間は、(ほかにもいろいろすることはありますが)なるべく、床・階段・畳のキズ・ヘコみ・汚れを徹底的に「検査」してください。
同じことは、壁や家具のキズ・ヘコみ・汚れにもいえることですので、併せて壁や家具も確認してください。
もちろん、冷蔵庫や家具を落とした場合など、明らかに事故があった場合は、その時その場で床・階段のキズ・ヘコみを確認します。
また、引越し先(新居・卸地)で引越し会社のチームが帰った後に、もう一度、部屋全体の壁・床・階段・畳と、家具のキズ・ヘコみ・汚れの有無を確認してください。
この確認をしないで荷物の開梱を始めてしまうと、キズ・ヘコみ・汚れに気づきにくくなります。
仮にキズ・ヘコみ・汚れが見つかったとしても、これが引越し会社の作業によるものかどうか、わからなくなってしまいます。
まとめ
最後にもう一度、全体のポイントを確認しておきましょう。
- 引越し業者は、床・階段(場合によっては畳)の養生はしてくれる
- ただ、養生がしてあっても床・階段・畳のキズ・ヘコみ・汚れは完全には防げない
- 引越し業者は、事故については非常に重い責任を負っていて、補償交渉には応じる義務がある
- スムーズに補償交渉を進めるためには、キズ・ヘコみ・汚れがない状態の床・階段・畳をフィルム式のカメラで撮影すること
- 引越し業者との補償交渉は早くしないと引越し後の生活のキズ・ヘコみ・汚れと区別がつかなくなる
- 早く補償交渉を始めるためには早くキズ・ヘコみ・汚れを確認する
このように、理屈はシンプルなのですが、カメラでの撮影や「とにかく早く」という、時間的な制約があるため、実際に対処するのは意外と大変です。
ただ、引越し先(新居・卸地)で引越し業者に事故を起こされて、結局泣き寝入りをするハメになると、床・階段の修理代はバカになりません。
特に、新築の建物の場合は、文字どおり「キズモノ」にされるわけですから、いい気分はしないでしょう。
ですから、引越し先(新居・卸地)が新築の建物の場合は、多少手間をかけてでも、事前の写真撮影をしておくべきでしょう。
なお、そもそもの話として、本来、事故がなく引越しが終わればいいわけですから、なるべく事故を起こさない引越し業者を選ぶことも重要です。
安全・安心に引越しをするためには、少々料金・費用が高かったとしても、管理人としては、大手引越し専門会社の利用をオススメします。