「引越しで壁にキズができたらイヤだなあ…。やっぱりあんな重い荷物を運んでると、結構キズになっちゃうものなの?」と不安になってませんか?

こんにちは。お客さまのお住いにキズがつかないように、しょっちゅう家具と建物に腕が挟まれていた、元引越し業者スタッフの管理人です。

引越しの事故のうち、壁のキズ・ヘコみ・汚れは、よくある事故のひとつです。

これらの事故は、主に家具・大型家電製品が壁に接触することによって発生します。

特に発生しやすい場所は、階段や狭い廊下の曲がり角のように、家具・大型家電製品を方向転換する場所です。

ですから、引越し業者のスタッフには、これらの箇所でしっかりと養生してもらったうえで、慎重に作業してもらう必要があります。

なお、壁のキズ・ヘコみ・汚れは、生活によっても発生します。

このため、事故が起こった場合は、すぐに対処しなければなりません。

事故があった壁をそのまま放置しておくと、その壁のキズ・ヘコみ・汚れが、引越し作業によるものなのか、それとも引越し後の生活によるものなのかが、わからなくなるからです。

こうなってしまうと、補償交渉が難航する可能性があります。

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引越しの前に必ず写真を撮っておく

インスタントカメラの写真

補償を受けるには「引越し業者の作業による事故」を証明しなければならない

壁のキズ・ヘコみ・汚れは、以下の3つのどれかに該当します。

  1. 引越し作業の前からもともとあったもの
  2. 引越し業者の作業によってつけられたもの
  3. 引越し作業の後にお客さまの生活によってついたもの

当然ながら、補償対象となるのは、2.だけです。

引越し業者としては、2.であることがハッキリしていれば補償に応じますが、そうでない場合は、そう簡単に補償には応じてくれません。

引越し業者は「赤字」にしないために簡単には壁の事故の補償に応じない

壁の修理にはそれなりの費用がかかります。

引越し業者が決めている引越しの料金・費用は、実は、かなり薄い利益しか出ていません。

ですから、壁の修理を補償してしまうと、ほとんどの場合は、その引越しは赤字になります。

だからこそ、引越し業者は、そう簡単には壁の事故の補償をしたがりません。

引越し業者に「悪質なクレーマー」扱いされないようにする

また、お客さまの中には、悪質なクレーマーもいますので、引越し業差の補償担当者は、お客さまからのクレームには、かなり警戒します。

悪質なクレーマーとは、壁のキズ・ヘコみ・汚れの原因が、引越し業者の作業ではない(前述の1.または2.)ことを知りつつ、クレームを入れる人です。

引越し業者の補償担当者は、補償の要求が、悪質なクレーマーによるクレームである可能性も考慮しながら対処しなければなりません。

さらには、壁のキズ・ヘコみ・汚れの原因が引越し業者の作業だと「思い込んで」補償を求める、厄介なお客さまもいらっしゃいます。

引越し業者に「正当な被害者」であることを伝える

逆にいえば、引越し業者から、このような悪質なクレーマーと判断されないようにすることが重要です。

つまり、「悪質なクレーマーでない」=「本当に引越し作業で被害にあった正当なお客さま」であることを伝えなければなりません。

そういう意味でも、壁のキズ・ヘコみ・汚れが「引越し業者の作業によって発生した」という明確な証拠が必要となります。

このような証拠がない限り、引越し業者は、壁の修理の補償には応じてくれません。

引越し現場の壁の証拠写真が重要

そこでポイントとなるのが、証拠=「引越し前の」壁の写真です。この写真が、引越し業者との補償交渉のときに役に立ちます。

壁にキズ・ヘコみ・汚れができてしまった場合、引越し前の「キズ・ヘコみ・汚れがなかった」壁の写真があると、非常に強力な証拠になります。

つまり、そのキズ・ヘコみ・汚れが、引越しの作業によってできたことを間接的に証明できるのです。

ですから、引越し当日を迎える前に、ぜひ「引越し前にはキズ・汚れ・ヘコみがなかった壁」の写真を撮っておいてください。

証拠写真は必ず「フィルム式」のカメラで

この際、デジカメやスマホの写真では、加工が簡単なため、証拠としてはほとんど意味がありません。

それこそ、どんなキズ・ヘコみ・汚れであっても、簡単に「キズ・ヘコみ・汚れがなかった」ように修正できてしまいます。

ですから、面倒でもフィルム式のカメラで壁の写真を撮ってください。カメラは、使い捨てカメラや、インスタントカメラで大丈夫です。

ただ、すべての壁の写真を撮ることは難しいでしょうから、なるべくキズ・ヘコみ・汚れになりやすい場所を重点的に撮っておいてください。

主にキズがつきやすい壁の場所は、廊下や階段の曲がり角、部屋の出入口です。

これは、これらの場所で家具や大型家電製品を回すこと多く、この際に壁の内側(角)や外側に当たることが多いからです。

特に本棚、洋服ダンス、ワードローブのような背の高い家具や、冷蔵庫、和ダンスなどの重い家電製品・家具が通った壁は、注意してチェックしてください。

参照:これで引越し業者との補償交渉もバッチリ!引越しの事故の対処7つポイント

引越し業者の養生の前後で目視確認

指差し確認する主婦

引越し業者のスタッフと一緒に壁のキズ・ヘコみ・汚れの有無を確認する

引越し業者は、引越しの現場で搬出作業・搬入作業に入る前に、必ず壁に養生を施します。

このとき、壁を養生する前に、引越し業者のスタッフと壁のキズ・ヘコみ・汚れの有無を必ず確認しておいてください。

こうすることで、事故が発生した場合であっても、「養生の前に確認したときは、この壁には、キズ・ヘコみ・汚れはありませんでしたよね?」といえます。

こうなると、引越し業者のスタッフは、言い逃れができなくなります。

大手引越し業者は逆に自ら壁の確認をする

一般的な大手引越し専門業者のスタッフ(特にチームリーダー)は、むしろ逆に、積極的にお客さまに、一緒に壁の確認するように求めます。

そして、壁の養生の際、壁にキズ・ヘコみ・汚れがあった場合は、ひとつひとつ、念を押しながら確認します。

これは、暗に「これは元々あったキズ・ヘコみ・汚れで、我々の作業によるキズ・ヘコみ・汚れじゃありませんからね」と伝えるためにしています。

ただ、これも引越し業者によって対応がバラバラです。ですから、お客さまご自身の方から、積極的に引越し業者のスタッフと確認するべきです。

養生は必ずしてもらう

なお、引越し業者によっては、作業の前に壁の養生をしないことがあります。特に、搬出作業でその傾向が強いようです。

確かに、荷物を置くことが前提の床と違って、壁は接触しないことが前提です。

このため、全員がベテランのスタッフのチーム編成であれば、壁に荷物を接触させることなく、無事に引越しは終わります。

ただ、理屈はそのとおりですが、チーム全体のスタッフがベテランであることなど、滅多にありません。

このため、必ず養生をしてもらうようにしてください。

養生をしてもらえなければ作業の様子を写真・動画に撮っておく

どうしても引越し業者のスタッフが養生をしない、あるいは養生をするように要求しにくい、ということもあると思います。

その場合は、引越し業者の作業の様子を写真や動画に撮っておいてください。

引越し業者は「…運送に関し注意を怠らなかったことを証明しない限り、(中略)損害賠償の責任を負い、速やかに賠償します。」となっています(標準引越運送約款第22条)。

標準引越運送約款第22条(責任と挙証等)
当店は、自己又は使用人その他運送のために使用した者が、荷物の荷造り、受取、引渡し、保管又は運送に関し注意を怠らなかったことを証明しない限り、荷物その他のものの滅失、き損又は遅延につき損害賠償の責任を負い、速やかに賠償します。
出典:国土交通省「標準引越運送約款」

つまり、「注意を怠らなかったこと」の立証責任は、引越し業者のほうにあります。

「養生をしなかった」ことは、明らかに注意を怠っていて、言い逃れはできません。

ですから、「注意を怠った」簡単な証拠さえあれば、引越し業者も補償に応じなければなりません。

その証拠が、「養生をしていない写真・動画」です。

引越し業者のスタッフを写り込ませて撮影する

ここで重要となるのが、必ず引越し作業の様子が写り込むように撮影することです。

つまり、引越し業者のスタッフと、「養生をしていない壁」を写すことです。

なるべく、家具・冷蔵庫などの大型の荷物を運んでいる作業の様子がいいでしょう。

単に養生をしていない壁の写真を撮ったとことで、それはただの壁の写真でしかありません。

重要なことは、「養生をせずに引越し作業をしている」ということが、わかる写真である、ということです。

参照:事故防止のためには必須の作業―引越し元(旧居・積地)での養生作業の注意点

参照:「養生しない」はあり得ない―引越し先(新居・卸地)での養生作業の注意点

養生用資材の汚れが壁に移ることも

壁紙

ほとんどの養生用資材は「中古」=汚れている可能性がある

意外に発生する事故が、養生資材(板ダンボール・プラスチックのパネル)の汚れが、壁に移る事故です。

引越し業者も経費を削減していますので、養生資材が常に新品であるとは限りません(というか、たいていの養生資材は中古です)。

このため、汚れが酷い中古の養生資材を使うと、その汚れが壁に移ることがあります。

ですから、なるべく(特に新築の場合)新品の養生資材を使ってもらってください。

使い捨ての資材であれば、少々料金が高くなる可能性がありますが、比較的簡単に用意してもらえます。

余談ですが、中古の板ダンボールは、家具を梱包する使い捨て資材として再利用されます。

引越し業者の営業員にはしつこく伝える

ここで大事なことは、「養生用の資材はキレイなものを使って欲しい」ということを、引越し業者の営業員にしつこく伝えることです。

つまり、「うるさい客」だと認識してもらうことが重要です。

ポイントは、「新品の養生用資材」ではなく「キレイな養生用資材」と伝えることです。

「新品」と伝えてしまうと追加料金が発生する可能性があるので、そのような伝え方はしません。

運がよければ、営業員や当日のチームリーダーの独自の判断で、新品(ただし使い捨て)の養生用資材を使ってくれることもあります。

こういう細かい要求は、意外に社内で共有され、当然当日のスタッフ(少なくともチームリーダー)にも共有されます。

引越し業者の営業員やスタッフには嫌な印象を与えてしまいますが、だからといって、特に不利益を被ることは滅多にありません。

スタッフの立場としては、「嫌な客に当たった」とは思いますが、慎重に作業しようという動機にはなります。

繁忙期は養生用資材が不足しがち=汚れた養生用資材を使わざるを得ない

なお、この点は、特に繁忙期の際に注意してください。

繁忙期では、全体的に資材(中古のダンボールを除く)が不足しがちで、養生資材も不足することが多いです。

このため、新品の養生資材(特に板ダンボール)が不足してしまいます。

板ダンボールは、長距離の引越しの場合に家具の梱包にも使うため、繁忙期の中盤に差し掛かると調達が追いつかなくなることもあります。

場合によっては、中古のものすらなくなることもあります。

このため、繁忙期の引越しでは、何度も使われた中古の養生資材を使われてしまうことがあります。

この中古の養生資材の汚れがひどい場合は、壁に汚れが移ります。

ですから、繁忙期の養生用資材の汚れには、特に注意が必要です。

壁のキズ・ヘコみ・汚れはその時その場で引越し業者と補償交渉に入る

待ったをかける主婦

引越し前後のキズ・ヘコみ・汚れと見分けがつかない

引越しの作業中または作業終了後に壁のキズ・ヘコみ・汚れを発見した場合は、その時その場で引越し業者に確認して、すぐに補償交渉を始めてください。

最初に触れたとおり、壁のキズ・ヘコみ・汚れは、以下の3つのどれかに該当します。

  1. 引越し作業の前から元々あったもの
  2. 引越し業者の作業によってつけられたもの
  3. 引越しが終わった後にお客さまの生活によってついたもの

その時・その場で補償交渉をしないと、引越し元(旧居・積地)の壁の場合は、1.と2.との区別がつきません。

また、引越し先(新居・卸地)の壁の場合は、2.と3.との区別がつきません。

引越し業者の補償担当者は基本的に「疑ってかかる」

引越し業者の補償担当者としてみれば、壁のキズ・ヘコみ・汚れは、1.か3.のいずれかではないか、と考えます。

つまり、(元からあったじゃないか?)とか、(引越しが終わった後のお客さまの生活でできたんじゃないか?)と疑います。

ましてや、引越し作業が終わった後で、引越し業者に連絡したのであれば、なおさらです。

時間が経てば経つほど、引越し業者の補償担当者は3.の可能性をうたがいますので、お客さまが不利になります。

ですから、なるべくに引越し作業が終わったら、壁をよく確認してください。

そして、キズ・ヘコみ・汚れがあった場合は、すぐに引越し業者に連絡して補償交渉を始めてください。

その時その場で引越し業者の作業による壁のキズ・ヘコみ・汚れであることを認めさせる

このとき、事故が発生したその時その場で、すべての補償交渉をまとめ上げることは必要ありません。

ポイントは、壁のキズ・ヘコみ・汚れが「引越し業者の作業によるもの」=引越し業者の過失であることを認めさせることです。

補償の内容や、(金銭補償である場合は)金額など、詳細については後日の交渉でもかまいません。

引越し業者が過失を認めない場合は、引越しの料金・費用の支払いを留保・拒否したり、書類へのサインを拒否したりするのも、ひとつの交渉手段です。

引越し業者の書類には安易にサインしない

特に、引越し業者が提出を求める書類には、「事故はありませんでした」という趣旨の記載が必ずあります。

これにサインしてしまうと、補償交渉の際に、壁のキズ・ヘコみ・汚れなどの「事故がなかった」証拠となってしまい、非常に不利になります。

ですから、少なくとも補償交渉がまとまらないうちは、こうした書類へのサインは拒否するべきです。

最低限、壁の事故について、補償交渉中であることを明記したうえで、サインしてください。

また、これらの書類は引越し業者が回収してしまいますので、コピーや写真を手元に残しておくことを忘れないでください。

参照:養生を取ったら事故の確認―引越し元(旧居・積地)での養生をはずす作業の注意点

参照:事故はその時その場で補償交渉―引越し先(新居・卸地)の養生をはずす作業の注意点

参照:作業開始の書類へのサインは慎重に―引越し元(旧居・積地)での作業開始の注意点

参照:書類へのサインは必ず「無事故を確認して」―引越し先(新居・卸地)での作業終了の注意点

まとめ

いかがでしたか?最後にもう一度、ポイントを確認しておきましょう。

  • 補償対象になるのは「引越しの作業で壁についたキズ・ヘコみ」であることを証明できるものだけ
  • フィルム式のカメラで撮影した「キズ・ヘコみがない壁」が証拠となる
  • 引越し業者には必ず壁の養生をしてもらう
  • 養生をしてもらえない場合はスタッフが写り込んだ引越し作業の動画を撮っておく
  • 養生資材の汚れが移らないように、新品の養生資材を使うように、引越し業者の営業員に(しつこく)伝えておく
  • 引越し作業の途中で壁のキズ・ヘコみ・汚れを見つけたら、その時その場ですぐに補償交渉に入る
  • 引越しが終わった後で壁のキズ・ヘコみ・汚れを見つけたら、すぐに引越し作業に連絡する

重要なことは、「フィルム式のカメラでキズ・ヘコみ・汚れがない状態の壁の証拠写真を撮っておく」ことです。

これにより、「もともとあったキズ・ヘコみ・汚れでないこと」が証明されます。

そして、「壁にキズ・ヘコみ・汚れを見つけたら、とにかく早く補償交渉に入ること」です。

これにより、「引越し後の生活でできたキズ・ヘコみ・汚れ」でないことも説明できます。

引越し業者は、あきらかに引越し作業のミスでない限り、そう簡単には補償交渉には応じてくれません。

ですから、事前の準備と素早い行動に心がけてください。

なお、そもそもの話として、本来、事故がなく引越しが終わればいいわけですから、なるべく事故を起こさない引越し業者を選ぶことも重要です。

安全・安心に引越しをするためには、少々料金・費用が高かったとしても、管理人としては、大手引越し専門会社の利用をオススメします。