「いつも引越しが終わると引越し業者の書類にサインしてるけど、『あ~やっと終わった』って感じで、何も読んでないのよね~。アレって大丈夫なの?」と疑問に思ってませんか?
こんにちは。実は(何も読まなくていいから、早くそのままサインして!)と、内心思いながらお客さまにサインを求めていた、元引越し業者スタッフの管理人です。
引越し先(新居・卸地)・新居での搬入作業がすべて終わったときに、引越し業者から、サインを求められる書類は、「作業の完了を確認する書類」です。
引越し業者によっていろいろと呼び方がありますが、いわゆる「完了証書」というものです。
この書類は、今ままでサインした書類の中でも、最も重要なものです。内容をよく読んだうえ、納得してサインしてください。
特に、事故があった場合は、絶対にそのままサインしてはいけません。
とはいえ、「あんな細かい字で難しく書いている書類なんで、読めるわけないでしょ!?」と思うでしょう。
そこで、この記事では、完了証書のポイントについて解説していきます。
引越し業者に求められても書類にはいきないサインしない
書類は引越し業者への「約束・誓約・確認」
引越し作業が終わると、引越し業者のチームリーダーは、お客さまに書類へのサインを求めます。
この書類へのサインをすることで、引越しのすべての作業が終わります。
さて、この書類ですが、お客さまはサインしますが、引越し業者のチームリーダーはサインしません。
つまり、この書類は、お客さまが、引越し業者に対して、一方的に、何かを「約束」「誓約」「確認」するためのものです。
そういう性質の書類ですから、お客さまにとって都合のいいことは、何一つ書かれていません。
ですから、内容もロクに読まず、また、質問もせずに、いきなり書類にサインしてはいけません。
引越し業者がすべての荷物が搬入したことを確認してからサインする
サインは「荷物の紛失はありません」という誓約
まず、引越し業者がサインをもとめる書類は、すべての荷物を運び込んだことを確認する書類です。
つまり、「荷物の下ろし忘れや、忘れ物はありませんでした」ということを、お客様に誓約させるための書類ということです。
逆にいえば、引越し業者の側としては、この書類は、つぎのことを証明する証拠ということです。
- 荷物の運び忘れがないこと
- 荷物の下ろし忘れがないこと
- トラックの荷台に荷物が残っていないこと
このため、お客さまは、書類には慎重にサインする必要があります。
引越し業者のトラックの荷台は必ず確認する
もちろん、忘れ物がない、また、荷物の紛失がない場合は、そのままサインしてもかまいません。
ただ、荷物が残っている可能性がある、あるいは、大事な荷物が見当たらないなど、忘れ物や紛失の可能性がある場合は、まだサインしてはいけません。
特に、引越し業者が資材の整理整頓をしていない場合は、トラックの荷台を確認していない場合や、資材の中やトラックの荷台に荷物が残っていることがあります。
このため、引越しの作業が終わったら、引越し業者が資材を整理整頓するまで待って、トラックの荷台を確認したうえで、書類にサインしてください。
参照:荷物を紛失しないように引越し先(新居・卸地)ではトラックの荷台を必ず確認する
トラブル・事故があったらすぐサインしてはいけない
サインは「トラブル・事故はありません」という誓約
次に、引越し業者がサインをもとめる書類は、引越しの作業で、トラブルや事故がなかったことを誓約する書類でもあります。
逆にいえば、引越し業者としては、この書類は、つぎのことを証明する証拠ということです。
- 引越しの作業が原因で、壁・床などの建物にキズ・ヘコみ・汚れなどはできませんでした。
- 引越しの作業が原因の家具・冷蔵庫・洗濯機・家電製品にキズ・ヘコみ・汚れ・不具合はありませんでした。
- 引越しの作業が原因で、ダンボールの中身などが、こわれませんでした。
- その他、引越しのトラブルや事故はありませんでした。
このような書類ですから、うっかりサインしてしまうと、後で発覚したトラブルや事故に対応してもらえなくなる可能性もあります。
このため、書類へのサインの時点で、すでに何らかのトラブルや事故が発覚しているのであれば、絶対にサインはしないでください。
引越し業者によるトラブル・事故がある場合はそのことを必ず明記する
引越し業者が帰らないからといってサインしてはいけない
ただ、引越し業者のチームリーダーとしても、書類へのお客さまのサインがないと、支店・営業所に帰れません。
ですから、お客さまに、なんとか書類にサインしてもらえるように求めます。
この場合は、まず落ち着いて支店・営業所に連絡をして、責任者に事情を説明してください。
そして、トラブルや事故について、補償交渉中である旨や解決していないことを追記したうえで、サインしてください。
引越し業者の書類は必ず撮影・コピーしておく
この際、必ず書類全体、特に追記した部分をスマホで撮影してください。
また、荷物に複合プリンター・スキャナー・FAXがある場合は、コピーも取っておいてください。
というのも、引越し業者の書類は、お客さまが、一方的に引越し業者に渡す(いわゆる「差入れる」)ものです。
つまり、お客さまの手元には何も残りません(少なくとも管理人は、お客さまに控えを渡す引越し業者を聞いたことがありません)。
ですから、後で何が書かれていたか、特に追記したかがわかるように、写真かコピーを残しておいてください。
【問題点】そもそも引越し業者が書類の内容を理解していない
【問題点1】現場の引越し業者のスタッフは書類の内容を知らない・説明できない
以上のように、引越し業者がサインを求める書類には、お客さまにとって有利なことは、一切書かれていません。
ですから、本来であれば、お客さまのほうでよく読んで、内容を理解・納得してからサインするべきものです。
ところが、細かくて読みづらい文字が大量に書かれていて、しかも堅苦しい書き方の書類ですから、ほぼ100%のお客さまが中身を読みません。
そこまでは仕方ないのですが、問題は、引越し業者の現場のスタッフも、この書類に何が書かれているのか、よくわかっていません。
ですから、お客さまが引越し業者のチームリーダーに書類の中身について質問しても、チームリーダーは、まず答えられません。
【問題点2】引越し業者の営業員や支店・営業所のスタッフも説明できない
では、現場のスタッフではなく、営業員や支店・営業所のスタッフではどうかというと、多少マシですが、やはり書類の中身はよくわかっていません。
管理人の個人的な経験では、支店長や営業所長のレベルでも、中身を理解しているかどうか怪しいレベルで、本社からの指示をそのまま伝えているような感じです。
もちろん、補償交渉の担当者であれば、書類の中身を理解していることがほとんどです。
ただ、引越し業者の書類は、引越し業者にとって一方的に有利な内容が書かれているものです。
補償交渉の担当者は、それをよく知っていますから、お客さまから質問があったとしても、正直には答えづらいのです。
せいぜい、「作業が終わったことの確認のための書類ですよ」くらいのことしか言いません。
【問題点3】お客さまが「印鑑を押さなければ大丈夫」と誤解している
引越し業者から、書類へのサインの他に、印鑑の押印を求められることがあります。
たまに、押印を拒否されるお客さまがいらっしゃいますが、あまり意味がありません。
おそらく、印鑑を押していないと書類の内容が法的に有効にならないと思っているのでしょう。
実は、直筆のサインは非常に強力な証拠となり、法的には、実印の押印と同じ効果があります。
ですから、実際は、書類に押印がなくても、直筆のサインさえあれば、法的には、何の問題もありません。
サインだけの書類であっても、「実印の押印がないからこの書類は無効だ!」と主張はできません。
【対策】引越し業者の書類への対策
【対策1】引越し業者の書類にはすぐにサインしない
要するに、引越し業者が、わざわざ堅苦しい書類へのサインを求めるのは、後で発覚したトラブルや事故のクレーム処理をやりやすくするためです。
引越し業者では、チームリーダーに対して、裁判の証拠とするために書類にサインしてもらう、ということをしっかりと伝えて教育しています。
その割には、中身についてはまるっきり伝えていませんが…
実際に、完了証書の中身は、お客さまにとって都合のよいことは書かれていません。
ほとんどの内容は、お客さまが引越し業者の責任を追求しない内容、いわゆる「免責条項」です。
このような、引越し業者にとってだけ都合のいい書類には、すぐにはサインしてはいけません。
【対策2】引越し業者の書類にサインする前にするべき9つのこと
少なくとも、書類にサインする前に、つぎのことをしておいてください。
- 部屋全体の壁・床・畳のキズ・ヘコみ・汚れを確認する。
- 大型の家具・冷蔵庫・家電製品のキズ・ヘコみ・汚れを確認する。
- 高価な家電製品の作動確認・不具合をチェックする。
- 引越し業者に資材を整理整頓してもらって、資材に荷物が紛れ込んでいないか確認する。
- トラックの荷台に荷物が残っていないか確認する。
- できるだけ書類はしっかり読む。
- 書類の中身をチームリーダー、支店・営業所のスタッフに質問する。
- トラブル・事故があった場合は、書類にサインする前に補償交渉をする。
- どうしてもトラブル・事故の後で書類にサインする場合は、トラブル・事故の詳細を書類に書いてからサインする。
【対策3】引越し業者の書類は必ずコピーを取るかスマホで撮影する
引越し業者がサインを求める書類は、原本が1部だけです。その原本も引越し業者が回収してしまいます。
少なくとも、管理人が把握している限り、お客さまに控えを渡している引越し業者は聞いたことがありません。
サインをした書類が引越し業者の手に渡ってしまうということは、お客さまとしては、「何が書いていたのか」を後日確認できません。
このため、書類にサインをしたら、引越し業者に渡す前に、必ずスマホで撮影しておいてください。
特に、トラブルや事故があった場合に追記した部分は、忘れずに撮影してください。
また、荷物に、複合プリンター、スキャナー、FAXがある場合は、コピーも取っておいてください。
写真やコピーをとることで、引越し業者に、後から「こういうことが書かれた書類にサインしたじゃないですか」と言われたときに、手元のデータで確認ができます。
もしそのときに、引越し業者がウソをつかれたとしても、手元にデータがあると、反論できます。
【対策4】事前に説明がしっかりできる引越し業者を選ぶ
繰り返しになりますが、引越し業者がサインを求める書類は、引越し業者にとって都合のいいことが書いてあり、お客さまにとっては一方的に不利な中身になっています。
ある意味では、こうした「不都合な」書類について、誠実な対応ができるかどうかをよく見極めるのが、いい引越し業者の選び方のポイントとなります。
もちろん、引越しの作業が終わったときに、「いい引越し業者だった」あるいは「いい引越し業者じゃなかった」ことがわかっても、意味がありません。
ですから、見積もりの段階で、きちんと営業員に質問をして、いい引越し業者かどうかを見極めます。
ただ、この記事で書かれている、引越し作業が終わったときの書類に関して、見積もりの時点で質問するのは不自然です。
ですから、他の書類のことでもかまいません。見積書や標準引越運送約款についてでもいいのです。
こうした、ちょっと「堅苦しい」書類についても、誠実に対応してくれる引越し業者が、いい引越し業者といえるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?最後にもう一度、引越し作業が終わったときに、引越し業者がサインを求める書類について、もう一度確認しましょう。
- 引越し業者がサインを求める書類は、お客さまが引越し業者に対して一方的に「誓約・約束・確認」する書類。
- 書類には、お客さまにとって有利なことはひとつも書かれていない。
- 書類へのサインは、「荷物の紛失はありません」という誓約を意味する。
- サインする前に、資材の整理整頓をしてもらい、トラックの荷台を確認して、忘れ物がないようにする。
- 書類へのサインは、「トラブル・事故はありません」という誓約を意味する。
- トラブル・事故がないことを確認するまでサインはしない。
- トラブル・事故があったことを確認したら、サインの前に補償交渉に入る。
- トラブル・事故があった場合は、その詳細を書類に追記してからサインする。
- サインした書類は、引越し業者に渡す前に、スマホで撮影するかコピーをとる。
- 引越し業者のチームリーダー、営業員、支店・営業所のスタッフに質問しても、書類のことは知らないか答えられない。
- いい引越し業者の選び方は、「堅苦しい」書類についても、しっかり答えてくれるかどうかをチェックすること。