「大手引越し専門業者は料金が高い、っていうイメージがあるけど、実際のところどうなの?」と、疑問に思ったこと、ありませんか?
こんにちは。大手引越し専門業者での勤務経験が長かった、元引越し業者スタッフの管理人です。
確かに、大手引越し専門業者は料金が高い、というネガティブなイメージがあります。ですが、それにも理由があります。
大手引越し専門業者は、引越しのサービスだけを専門とした大手運送業者です。
引越し業者は、運送業法(「貨物自動車運送事業法」)の許可を受けた、運送業者(「貨物自動車運送事業」)のひとつのジャンルです。
大手の引越し業者の中には、複数の運送業(物流、宅配便など)を兼業している業者もあります。
これに対し、大手引越し専門業者は、引越しだけをサービスとして取り扱っています。
大手引越し専門業者の特徴としては、なんといっても高品質なサービスといえます。その分、一般的には料金・値段も高額で、値引き交渉も難しいという特徴もあります。
このため、高品質なサービス、つまり、家具や建物の破損などの事故が発生しない引越しを特に希望するのであれば、利用をご検討ください。
大手引越し専門業者はまさに引越しのプロ
あらゆることを引越しのためだけに特化した企業
大手引越し専門業者は、まさに引越しのプロとして、引越しに特化した組織となっています。
具体的には、スタッフ、資材、トラック、業務処理体制などが、次のとおり引越し専用となっています。
- スタッフ:引越しの作業しかしないため、経験が蓄積されやすい
- 資材:引越しに特価した専用の資材を使うため、事故が起こりにくい
- トラックのサイズ:狭い住宅街でも対応できるよう、様々なサイズのトラックがある。
- トラックのコンテナ:トラックのコンテナの内壁を保護材で覆っているため、家具に傷がつきにくい
- 業務処理体制:特にスタッフやトラックの手配などで柔軟に対処しやすい
これらの体制が品質の高いサービスにつながります。
大手引越し専門業者は高品質だけども高価格
「本業」以外の独自サービスで他社との差別化をしている業者もある
このように、大手引越し専門業者による引越し作業は、高品質・高付加価値であるという特徴があります。
これに加えて、独自のサービスを提供して、他の引越し業者とのサービス内容を差別化しています。
ただ、「本業」である引越しサービスそのものは、家財道具を引越し元(旧居・積地)で搬出して引越し先(新居・卸地)に搬入することです。
これは、どの業者も同じサービスです。
このため、大手引越し専門業者が提供する「独自」サービスは、あくまで「本業」以外の「オプション」のサービスであることがほとんどです。
いろいろと特徴的な独自サービスがありますが、その独自サービスを理由に引越し業者を決めるほどの革新的なサービスは、まずありません。
仮にあったとしても、特許が取れるくらいのものでもない限り、大抵は真似されます。
ですから、このような独自サービスは、「本業」の引越しサービスで業者を選定した後で検討しても遅くないでしょう。
広告によるブランド強化=高価格化の原因
さらに、大手引越し専門業者は、テレビCMなどの広告を利用するPR戦略により、知名度を高くし、引越しの受注につなげています。
また、某大手引越し専門業者は、有名なマンガ・アニメのキャラクターを使用してブランド強化をしています。
当然ながら、これらのPR戦略はタダではなく、膨大な広告費やキャラクター使用料が発生しています。
もちろん、その広告費やキャラクター使用料は、最終的にはお客さまの利用料金に上乗せされる形になります。
大手引越し専門業者は評判の低下(=レピュテーションリスク)に敏感
これだけの費用を投下して育てた知名度・ブランド力です。
少なくと会社としては、その評価を下げるようなことは滅多にしません(個々のスタッフは別ですが)。
例えば、大手引越し専門業者は、比較的補償交渉に応じてもらいやすい、という特徴もあります。
これも、ブランド力や評判を下げたくない、という大手引越し専門業者ならではの事情といえます。
「安全・安心」にお金を払えるかどうかがポイント
このように、大手引越し専門業者では、以下の特徴があります。
- 高品質を維持する独自の体制
- 独自サービスの開発・提供
- 高額な広告費・キャラクター使用料
- ブランドの低下を避ける補償体制
これらの特徴は、大手引越し専門業者のサービスの料金・費用・金額が割高な理由です。
同時に、大手引越し専門業者のサービスが他の引越し業者とくらべて、安全・安心である理由でもあります。
ですから、安全・安心にお金を払えるかどうかが、大手引越し専門業者を利用するかどうかの判断のポイントです。
婚礼家具・高級家財がある場合や新築一戸建ての引越しにおすすめ
荷物を破損したくない場合は大手引越し専門業者の利用を検討する
高品質のサービスが期待できる大手引越し専門業者の利用は、キズものにしたくない家具などの荷物がある場合の引越しにおすすめです。
具体的には、婚礼家具(桐製の和ダンス、大型の洋服ダンス・和ダンスなど)、大型家電(冷蔵庫、テレビなど)、高級家財などがある場合です。
これらの運搬作業は、スタッフ・資材等の点で最も優れている大手引越し専門業者が得意とする作業です。
なお、高級家財のうち、ピアノ、美術品、骨董品など、特殊な管理が必要な荷物については、運搬を断られることがありますので、注意が必要です。
第4条(引受拒絶)
2 荷物が次に掲げるものであるときは、当該荷物に限り引越運送の引受けを拒絶することがあります。
(途中(1)~(3)省略)
(3)動植物、ピアノ、美術品、骨董品等運送に当たって特殊な管理を要するため、他の荷物と同時に運送することに適さないもの
(4)省略
出典:国土交通省「標準引越運送約款」
ちなみに、アップライトピアノくらいであれば、運んでくれる業者もあります。管理人も何度か運んだことがあります。
新築一戸建て・マンションの場合は引越し専門業者がお勧め
また、大手引越し専門業者は、新築の建物(一戸建て・マンションともに)への荷物の搬入のように、壁や床にキズやヘコみを付けたくない場合の引越しにもおすすめです。
これは、壁や床を保護(=養生)する資材が豊富なことや、新築の引越しの件数が多いためにスタッフが作業に慣れている、という点で事故が起こりにくいためです。
これに加えて、万が一、事故が起こった場合であっても、大手引越し専門業者の場合は、ブランドの毀損やレピュテーションリスク(評判が悪化するリスク)を避けるため、比較的補償に応じてくれやすい、というメリットもあります。
これらの点から、新築の一戸建て・マンションへの引越しの場合は、大手引越し専門業者がお勧めです。
長距離の引越しには要注意
なお、大手引越し専門業者は、近距離の引越しを中心に対応していることが多いです。
長距離の引越しの場合は、下請けの運送業者に運送を外注して対応しています(ただし、長距離物流の子会社を保有している場合もあります)。
このため、下請け先のドライバーの能力にバラつきがあることがあります。
長距離の引越しの場合は、自社で物流事業もおこなっている大手物流兼業業者からの見積もりも検討してみてください。
大手引越し専門業者でも繁忙期(特に3月・4月)の品質は低下する
繁忙期はどの引越し業者もアルバイト・派遣社員だらけ
管理人は、大手引越し専門業者の中でも、高品質で評判な会社で長年働いてきました。
そのような会社であっても、繁忙期は、「チームリーダー以外は引越し未経験のアルバイト・派遣社員だけ」という状況が発生します。
というよりも、それが「通常」であり、何も特別な状況ではありません。
引越し業界では、春の繁忙期は稼ぎ時のため、かなり無理をして、大量の引越しを受注します。
この結果、毎年人手不足(経験者も未経験者も)となり、結果として、引越しのサービスの品質は、極端に下がります。
これは、いかに大手引越し専門業者であっても、避けられません。
引越し繁忙期の「傭車」が事故の原因に
大手専門引越し業者は、「専門」とはいえ、例外的に、閑散期にちょっとした物流の業務を請け負っている業者もあります。
これは、大手引越し専門業者の直営店ではなく、主にフランチャイズ加盟店などでおこなわれています。
なぜそのような「専門外」の業務を請け負っているのか。
それは、繁忙期に、その物流の業務の発注業者(=運送業者)から、トラックを手配してもらうようにするためです。
閑散期に物流の運送業者に「貸し」を作っておくことで、逆に繁忙期には物流の運送業者(業界用語でいうところの「傭車」)に引越しの仕事を依頼する。
このような構造になっています。
つまり、いかに大手引越し専門業者とはいえ、繁忙期には、必普段引越し業務をやっていない=経験が浅い物流業者のトラック(+そのドライバー)がサービスを担当することがあります。
このような点からも、繁忙期には、大手引越し専門業者といえども、サービスの品質低下は免れません。
相見積もりは大手引越し専門業者同士で
大手同士以外では相見積もりが断られる場合も
大手引越し専門業者は高品質・高付加価値を売りにしているため、価格競争を嫌う傾向があります。
すでに述べたとおり、引越しサービスは、家財道具を引越し元(旧居・積地)で搬出して引越し先(新居・卸地)に搬入するサービスです。
理屈のうえでは、どの業者がサービスをしたとしても、同じ結果になるはずです。
ところが、実際には、業者によってサービス内容のレベルに差があります。
特に、大手専門引越し業者と、中小の引越会社とでは、どうしても細かい部分でサービスに差がついてしまいます。
大手専門引越し業者の一部のスタッフや営業員の中には、自社のサービスと中小の引越し業者のサービスは、そもそもジャンルが違うサービスだと思っている者もいます(あくまで管理人の個人的な経験によります)。
このため、安心・高品質を売りにしている大手専門引越し業者と、安さや低価格を売りにしている中小の引越し業者との相見積もりは、嫌われる可能性もあります。
場合によっては、営業員から、中小の引越し業者との相見積もりが断られることとがあるくらいです。
ただし、同じ大手引越し専門業者との価格競争は、サービス内容のレベルが同じ程度であるため、断られるほどのことはあまりありません。
このため、相見積もりをおこなう場合は、大手引越し専門業者同士や大手物流兼業業者とおこなってください。
「単身パック」は大手物流兼業業者で利用する
単身パックは提供していない場合もある
このように、大手引越し専門業者は、引越しに特化した会社です。
ただ、引越しに特化しすぎているため、大手物流兼業業者のような物流事業をおこなっていません(長距離の引越しのための子会社が「ついでに」物流業務をおこなうことはあります)。
単身パックは、荷物を専用のカーゴに積込み、カーゴごとトラックに積込みます。
この際、ひとつの大型トラックやトレーラーに、他のお客さまの荷物と一緒に大量に混載して運ぶことによって、コストダウンしています。
これが、単身パックの安さの秘密です。
単身パックは、毎日大型トラックやトレーラーを運用できる車両・人材・物流拠点などの大規模なインフラがなければ提供できないサービスです。
大規模な物流インフラは、大手物流兼業業者ならではのものであり、大手専門引越し業者は保有していません。
このため、いかに大手専門引越し業者とはいえ、ほとんどの場合は、単身パックを提供していないません。
単身パック・長距離混載便は割高になる可能性がある
仮に、大手引越し専門業者が単身パックを提供している場合であっても、他の物流業者への下請けや、他の物流業者との共同事業であったりする場合がほとんどです。
このため、大手物流兼業業者の単身パックに比べて、料金が高くなる場合もあります。
また、同様に、長距離混載便サービスも、単身パックと同じように、大規模な物流インフラを必要としています。
こちらの長距離混載便サービスも、自前では提供せずに、下請けの運送業者に外注していることが多いです。
このため、自前で長距離混載便サービスを提供している大手物流兼業業者の長距離混載便よりも、大手専門引越し業者の場合は、料金が割高に場合もあります。
まとめ
管理人が大手引越し専門業者で働いた経験からいえば、大手引越し専門業者は、他の引越し業者に比べて、いろいろな点で強い思い入れ・こだわりがあります。
それは、サービスの品質=安全でお客さまが安心できる引越しを提供することだけではありません。
個々の引越しを早く終わらせること、難しい仕事でもすんなりこなすこと、営業員個人や支店・営業所の売上の金額、会社の評判を上げる(下げない)ことなど、いろんな点に思い入れ・こだわりがあります。
その結果として、(程度の差はありますが)個人個人に「我々は安かろう悪かろうのサービスを提供しているのではない」という想いがあります。
もちろん、そのぶん、サービスの料金・費用・価格は高い傾向があります。
正直なところ、単に「安い」引越しを求めるのであれば、大手引越し専門業者の利用はしないほうがいいです。
ただ、大手引越し専門業者には、値段に見えないメリットもたくさんあります。
特に、安全な作業と、万が一、事故があった場合の対応については、大手引越し専門業者が最も安心できるといえるでしょう。
少々値段が張っても、安全安心な引越しをお求めの場合は、ぜひ大手引越し専門業者の利用をご検討ください。