越しの繁忙期・ピークである2月後半から4月前半には、引越し業者のスタッフは、一般の方々には想像もつかないような量の作業をします。
これは、一日に何件(3~5件)もの作業をこなす場合と、大量の荷物がある現場の作業を1件だけこなす場合があります。
ちなみに、因果関係があるのかどうかはわかりませんが、管理人はこの時期に目が真っ赤に(充血ではなく、毛細血管が破裂したからか、文字どおり赤く)なったことがあります。
以下の話は、後者のパターンで、管理人が実際に経験したことです。
引越しの繁忙期=経験者は一人
この話は、管理人がある大手引越し業者のチームリーダーとして、2回目のピークを迎えた頃の話です。
店舗は、ある都道府県庁所在の店舗、現場も同じ市内でした。
時期は3月の後半だったと記憶しています。3月後半は、1年で最も引越しの件数が多い時期です。
一日の作業を終えて事務所に帰り、翌日の現場の配属と作業指示書を確認したところ、なんとなく嫌な予感がしました。
というのも、大量の荷物(確か50㎥だったと思います)がある現場に配属されていたからです。
引越しのピークには、人手不足となるため、引越し業者は、原則として、引越しの経験者(=チームリーダー)を各現場に一人しか配属しません。
つまり、大量の荷物を実質的に一人で対処しなければならなかったわけです。
派遣社員6人と下請け業者のドライバーでの引越し作業
翌朝、事務所に出勤してみると、案の定、経験者は自分一人だけ。しかも、長距離の引越しの積み込み作業であったため、ドライバーは下請け業者のドライバー。
引越しがピークの時期の下請け業者は、たまたまトラックの荷台が空いている物流業者であることが多く、ドライバーは、いわゆる長距離のトラックドライバーです。
このようなドライバーは、引越しのスタッフとしてはまったくの未経験者であることが多いです。
そして、他のスタッフは全員派遣社員。
いわば、とりあえず見積書に記載された通りの人数を頭数だけは揃えたような状態です。
管理人の経験では、派遣社員が引越し作業の経験者である可能性は極めて低く、実質的には未経験者のようなものです。
その時も、結果的には誰も経験者はいませんでした。
こうして、経験者一人と素人7人の引越しが始まりました。
大量の荷物と重なる悪条件
この時のお客さまは、某大手電機メーカーの社員のご家族の方でした。
3月後半という引越しの時期から推測すると、おそらく転勤のためのお引越しだったと思います。
現場はタワーマンションの最上階で、見晴らしは抜群でした。また、一般的なご家族に比べて、荷物が多く、裕福なご家庭でした。
さて、長距離の積み込みでタワーマンションの最上階というのは、引越しの条件としては、あまりよくありません。
というのも、エレベーターで荷物を運ぶ時間がかなりかかってしまうため、作業終了時間が相当遅くなからです。
しかも、現場は下請け業者の大型トラックが入らない道幅でした。
ということは、管理人が運転していた1.5トントラックに一旦荷物を積み込み、それを下請け業者の大型トラックに積み替えなければなりません。
結局引越し作業終了時刻は午後10時
このような悪条件のもと、引越し作業は始まりました。
経験者は管理人1人のみ。しかも下請け業者のドライバーは、離れている場所にトラックを駐車しているため、トラックから離れることができません。
管理人は、引越し作業未経験の派遣社員6人を指揮し、作業を一から教えながら、作業を進めました。
小物の搬出作業まではさほど問題はありませんでしたが、大型の家具・家電製品の搬出から、作業が滞り始めました。
というのも、長距離での積み込みの場合、すべて使い捨ての資材(エアーキャップや巻きダンボールなど)で梱包しなければなりません。
それにもかかわらず、梱包作業を知っているのは管理人1人のみ。これも、一から派遣社員に教えながら作業しなければなりません。
そうこうしているうちに、トラックの荷台で荷物の積み込み作業をしなければならなくなり、その後下請け業者のトラックに積み替えにいかなければならなくなります。
このように、経験者が1人しかいない場合、荷物の搬出の指揮、大型の荷物の梱包、トラックの荷台での積み込み、下請け業者への荷物の積み替えなどをすべてしなければならなくなります。
結局、作業が終わったのは、午後10時でした。
お客さまは温厚な方でしたので、特にクレーム等にはなりませんでしたが、「こんなやり方でいいのか?」と引越し業界のあり方に疑問を持った一日でした。
繁忙期には、このような遅い時間の作業が終わることもあるため、スケジュールには十分に気をつけてください。