2012年10月1日に改正労働者派遣法が施行されました。

この改正により、日雇派遣が原則として禁止されることになりました。

引越し業界では、スタッフの確保のために、多くの引越し業者が派遣会社を利用して日雇いの派遣社員を受け入れています。

このため、今回の改正による日雇派遣の原則禁止は、引越し業者に大きな影響を与える可能性があります。

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日雇派遣の禁止とは?

「日雇派遣」とは、日雇労働者の労働者派遣です(労働者派遣法第35条の3)。

また、「日雇労働者」とは、「日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者」(同上)のことです。

つまり、今回禁止されるのは、「日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者」の労働者派遣です。

また、今回禁止される日雇派遣は、あくまで「日雇労働者の派遣」であり、「日々の派遣」や「30日以内の短期の派遣」ではありません。

このため、31日以上雇用される労働者の「日々の派遣」や「30日以内の短期の派遣」は、禁止されたわけではありません。

日雇派遣の禁止の例外は?

日雇派遣は、「原則」禁止であることから、ふたつの例外があります。

このため、この例外に該当しない限り、日雇派遣は利用できなくなります。

例外のひとつは、専門性の高い業務の派遣です(いわゆる「専門17.5業務」)。もうひとつは、雇用の機会の確保が特に困難な者です。

具体的には、①60歳以上の者、②雇用保険の適用を受けない学生(いわゆる昼間学生)、③副業として日雇派遣に従事する者(ただし、年間の生業収入=主たる業務の収入が500万円以上の場合に限る)、④主たる生計者でない者(例えば主婦など。ただし、世帯収入が500万円以上の場合に限る)―の4者です。

引越し業界は日雇派遣ができないと成り立たない

さて、引越し業界は、作業内容が肉体的・静止的に厳しいため、慢性的に人材が不足しがちです。

しかも、業務の繁閑の差が著しいため、常い業務の繁閑に併せて労働力を調整する必要があります。この点から、常用雇用である正社員の雇用は難しいといえます。

引越し業界では、派遣社員やアルバイトのような、短期で労働力を調整できる社員がいなければ、ビジネスモデル自体が成り立ちません。

今回の改正により、日雇派遣が原則禁止されましたので、引越し業界としては、労働力の調達方法が著しく限定されるかたちになります。

4月の引越しは値段・事故に要注意

この点について、引越し業界では、2月後半からゴールデンウィークまでの繁忙期にどのように労働力を調達するかが課題となります。

現実的な方法としては、アルバイトによる労働力の調達か、または上記②の学生の日雇派遣を利用するかの対応が考えられます。

ただ、アルバイトにせよ日雇派遣にせよ、厳しい肉体労働が伴う引越し業界では、実質的には男性の高校生または大学生くらいしか戦力にはなりません。

このため、高校や大学の授業が始まる4月の平日では、極端に労働力の調達が難しくなります。

逆にいえば、引越し業者の利用者としては、値段が高くなったり、事故率が上がったりするリスクがあります。