「そういえば、ウチの2階にあるタンス、前回の引越しの時は窓から入れたんだっけ…。今回もあんな危なさそうな作業するの?」と心配になってませんか?

こんにちは。窓吊り作業があるたびに、自分のロープの結び方が合ってるかどうか、不安になっていた、元引越し業者スタッフの管理人です。

本棚、洋服ダンス(ワードローブ)、冷蔵庫など、背の高い家具・家電製品を2階から運び出す際に、階段を通らないことがあります。

また、和ダンス、ソファー、ベッドのように、幅が広い家具も、同じように階段を通らないことがあります。

こうした階段を通らない家具・冷蔵庫を外に運び出すためには、窓から吊り降ろす作業、いわゆる「窓吊り作業」をしなければなりません。

おそらく、前回の引越しでは、こうした家具・冷蔵庫を窓から吊り上げたはずです。今度は、その逆の作業をすることになります。

窓吊り作業は、事故が起こりやすいですから、注意してください。

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引越し元(旧居・積地)での吊り上げ作業の前に家具・家ともにキズの確認

確認する女性

ハシゴを使わない窓吊りは建物に家具・冷蔵庫が接触する

窓吊り作業は、いくつかやり方があります。

ロープを使って降ろすのは共通していますが、ハシゴを伝わらせて降ろす場合と、ハシゴを使わずにそのまま降ろす場合があります。

ハシゴを使う場合は、当然ハシゴには家具・冷蔵庫が接触しますが、建物にはほとんど接触しません。

他方、ロープだけを使う場合は、家具・冷蔵庫が建物の壁・手すりに接触します。

というより、家具・冷蔵庫と建物とが完全に接触することなく、作業を終わらせることは事実上不可能です。

もちろん、ベランダやテラスから吊り降ろす場合は、壁にはほとんど接触しませんが。

家具・冷蔵庫を建物から引き離すのは難しい

引越し業者もプロですから、窓から家具・冷蔵庫を吊り降ろす際、なるべく壁に接触しない方法を知っています。

これは、「凧」という方法で、家具・冷蔵庫に結びつけたロープを下から引っ張りながら、家具・冷蔵庫を建物から離して吊り降ろす方法もあります。

ただ、この方法は、家具・冷蔵庫へのテンションのかけ方が、非常に難しいものです。

かなり経験を積んだスタッフが担当しないと、家具・冷蔵庫が揺れてしまい、かえって危険です。

残念ながら、こうした「熟練の技」を持ったスタッフがチームに配属されることは、滅多にありません。

建物のキズやヘコミに注意

こうした事情があるため、ハシゴを使わずにロープだけで吊り降ろす場合、家具・冷蔵庫が建物に接触するのは、やむを得ません。

ですから、作業を始める前に、吊り下ろす作業場所の壁・手すり・窓枠のキズやヘコミの有無を確認してください。

特に、冷蔵庫のように極端に重い家具を吊り下ろす場合は、非常にキズやヘコミができやすいものです。

また、古い建物の場合、外壁が経時劣化していて、ちょっとした接触や摩擦でも、外壁がボロボロになることがあります。

このような場合は、より念入りに作業場所をチェックしてください。

家具・冷蔵庫の背中に注意

家の壁・手すり・窓枠にも注意は必要ですが、家具・冷蔵庫の側にも注意は必要です。

家具・冷蔵庫は、背中の部分を壁に当てて吊り下ろしていきます。このため、背中の部分にキズがつくことがあります。

もちろん、裸のまま吊り降ろすのではなく、厳重に梱包したうえで吊り下ろします。

それでも、冷蔵庫のような重い家具の場合は、キズがつくことがあります。

また、梱包や吊り降ろし作業がヘタな場合は、吊り降ろしている途中で、梱包がめくれてしまって、キズがつくこともあります。

背中の部分は普段目にする部分ではありませんので、あまり気にならないかもしれません。

ただ、もしキズがついてしまうと気になるようでしたら、よく注意してください。

引越し業者には特に手すりと窓枠を徹底的に養生をしてもらう

ベランダ

手すり・窓枠に瞬間的に圧力がかかる

窓吊り作業では、吊り降ろす前に、ベランダ・テラスから降ろす場合は手すり、窓から直接降ろす場合は窓枠に、家具・冷蔵庫を「仮置き」します。

この際、手すりと窓枠に、瞬間的に圧力がかかることがあります。

ベテランの引越し業者のスタッフであれば、持ち方を工夫して、なるべく1箇所に集中的に圧力がかからないようにするものです。

ただ、それだけの技術や経験がないと、どうしても楽したいあまり、手すり・窓枠にモロに置いてしまいます。

その結果、窓枠が曲がったり、手すりがヘコんだりします。

手すり・窓枠はいくら養生してもしすぎることはない

ですから、窓枠が曲がったり、手すりがヘコんだりしないように、引越し業者には、徹底した養生を求めてください。

通常、手すりや窓枠には、中古のダンボールを複数枚当て、その上から毛布、キルティング加工されたマット、「蛇腹」と呼ばれる家具の梱包材などを、2~3重に当てて保護します。

これだけの養生をしても、アルミの窓枠などに大きな冷蔵庫などの重い家具を当てると、ヘコむことがあります。

ですから、いくらしっかりと養生がされてあったとしても、窓吊り作業終了後には、必ず作業があった窓枠の確認をするようにしてください。

吊り降ろし作業では落下事故は滅多に起こらない

引越し元(旧居・積地)での窓吊り作業は、吊り降ろしの作業ですので、重力に逆らわずにそのまま降ろすだけです。

このため、引越し業者のスタッフもあまり腕力を使いませんし、落下事故もほとんどありません。

ただし、ロープの結び方が下手な場合、特に結び方が緩い場合は、落下事故がありえます。

このため、経験が浅いチームリーダーが取り仕切っている場合は、注意してください。

引越し業者のスタッフが地面に直接家財を置かないように注意する

青ざめる女性

「荷物を地面に置いてはいけない」はわりと最近のこと

信じられないかもしれませんが、「お客さまの荷物は地面に直接置いてはいけない」という概念は、もともと引越し業者にはありませんでした。

管理人が現役の引越し業者のスタッフだった頃に、ようやくそういった考え方が普及しはじめ、地面に直接荷物を置くと怒られるようになりました。

最近はかなり改善されているようですが、この記事を執筆した時点(2017年11月)でも、たまに地面に直接荷物を置いている引越し業者・運送会社を見かけます。

当然、窓吊り作業の際にも、引越し業者おスタッフに、吊り降ろされた家具や冷蔵庫を、地面に直接置かれる可能性はあります。

地面に直接置くとキズ・汚れがつく

コンクリートのような固い地面に、家具・冷蔵庫を直接置いた場合、キズの原因になります。

また、家具・冷蔵庫を土の上に直接置いた場合、その荷物自体の汚れはもちろんのこと、他の荷物、引越し先(新居・卸地)の床・畳の汚れの原因となります。

大手の引越し業者の場合は、社員教育が行き届いていますので、たとえダンボールひとつであっても、直接地面に置くことはありません。

ましてや、家具や冷蔵庫のような高価な荷物を直接地面に置くことなどありえないことです。

しかしながら、社員教育が行き届いていない引越し業者や、経験の浅いスタッフは、うっかり地面に直接荷物を置くことがあります。

ですから、そのようなことがないように、地面に何も敷かずに窓吊り作業を始めようとした場合は、引越し業者のスタッフに、何か敷いてもらうように求めましょう。

専用のシートがあればシート、巻きダンボール、中古のダンボール等、敷けるものであれば、なんでもかまいません。

古い一軒家では屋根の破損に注意する

瓦屋根

人間が乗ったら屋根は簡単に壊れる

古い一軒家での吊り降ろし作業の場合は、さらに注意が必要です。

特に、ベランダがついておらず、また、吊り降ろし作業に適切な窓がない場合は、屋根に登って吊り降ろし作業をします。

このような場合、かなり高い確率で、屋根の事故が起こります。

屋根がトタンや瓦の場合は、引越し業者のスタッフが上に乗ることで、トタンが曲がったり、瓦が割れたりすることがあります。

瓦屋根は「割れる」可能性がある

特に瓦屋根は、瓦が重なった場所を踏まないと、意外に簡単に割れてしまうものです。

瓦職人の経験でもない限り、今どきの引越し業者のスタッフが、そのようなことを知っている可能性は低いでしょう。

管理人も、かつて瓦屋根で窓吊り作業をした際、瓦を割ってしまったことがあります。

その後、たまたま瓦職人の経験がある同僚に、瓦の乗り方を教えてもらいました。

このように、瓦屋根での窓吊りの場合は、瓦が割れるリスクが非常に高いです。

瓦屋根は、いったん割れてしまうと、修理に非常に手間と時間がかかります。

特に梅雨の時期に瓦が割れてしまうと、雨漏りしてしまう可能性もあります。

この点からも、特に瓦屋根での窓吊り作業には注意を要します。

屋根での吊り降ろし作業は引越し業者のスタッフの落下事故がある

なお、屋根の上で吊り降ろし作業をする場合、荷物だけでなく、引越し業者のスタッフの落下事故の可能性もあります。

当たり前ですが、一般的な住宅の屋根は、人が歩くことを前提に作られていません。

また、引越し業者のスタッフも、さすがに経験を積んだベテランのスタッフでさえ、屋根での作業には慣れていません。

スタッフの落下事故があった場合は、引越しどころではなくなります。

不幸にも死亡事故などが起こってしまうと、非常に後味が悪い引越しになってしまいます。

引越し業者にはスタッフに安全帯を「使わせる義務」がある

本来であれば、こうした高所作業では、引越し業者のスタッフは、安全帯を使わなければなりません。

というより、労働安全衛生法により、引越し業者の側に、安全帯を使わせて落下事故が発生しないようにさせる「義務」があります。

ただ、現場では、必ずしもそうした措置は取られていないこともあります。

ですから、安全の確保がされていない状態で、屋根の上から窓吊りをしようとしている場合は、しっかりと安全を確保するよう、引越し業者に求めてください。

まとめ

引越し元(旧居・積地)での窓吊り作業は、引越し先(新居・卸地)での窓吊り作業とは違って、単に荷物を吊り降ろすだけです。

見た目ほど難しい作業ではありませんし、腕力もほとんど使いません。

ただ、それでも事故が起こりやすい作業であることは間違いありません。

落下事故のような派手な事故は、誰が見てもわかりやすいですし、さすがに悪質な引越し業者も、ごまかすようなことはしません。

ただ、この記事でも触れているように、ちょっとしたキズやヘコミは、注意して見ないと気づきません。

引越し業者も、そう簡単に補償交渉には応じてくれません。

ですから、現場での作業を注意深く見守りながら、キズ・ヘコミを見つけたら、「その時その場で」交渉することが重要です。

参照:引越しでの壁のキズ・ヘコみ・汚れは写真撮影・その時その場の補償交渉が重要