「今度中古の一戸建てに引越しすることになったけど、賃貸だし、建物もちょっと古いし、引越しが心配なんだけど…」と不安に思ったこと、ありませんか?
こんにちは。瓦屋根で窓吊りをした際、豪快に瓦を割ってしまい、お客さまからお叱りを受けたことがある、元引越し業者スタッフの管理人です。
中古一戸建ての建物への荷物の搬入作業では、新築一戸建ての建物ほどではないにせよ、事故のリスクが高いという特徴があります。
具体的には、建物のキズの事故が発生しやすいです。特に、床、壁、階段などは、事故がおこりやすい箇所です。
このうち、室内の階段は、床・壁のキズや家具のキズなど、引越しの作業でも最も事故が起こりやすい場所のひとつです。
このため、引越し業者には、壁・床の養生を徹底してもらうことが重要です。また、引越し作業の前後に建物の状態の確認を怠らないようにします。
なお、中古の建物の特徴として、すでに壁・床にキズがついている場合もあります。
この場合、仮に引越し作業でキズがついた場合であっても、すでについているキズとの区別がつきません。
このため、引越し業者との交渉が難航したり、最悪の場合、泣き寝入りすることになります。
中古一戸建ての「原状回復」のためにも高品質な引越しプランを
原状回復費用≒元に戻す費用
賃貸の中古一戸建ての建物は、退去の際に、いわゆる「原状回復」(”現状”回復ではありません)をおこなわなければなりません。
原状回復とは、中古一戸建ての退去の際に、借主の故意・過失によって生じたキズ等を「原状に」回復することです。
ただし、このキズ等には経時劣化や通常の使用による損耗は含みません。ですから、新品同様の、借りた時の状態に完全に復元させる必要はありません。
この原状回復の費用ですが、広い一戸建ての場合は、かなりの金額(数十万円程度)になることがあります。
もちろん、悪質な不動産屋や貸し主が、いわゆる「吹っかける」場合もありますが、中には正当な理由による請求であることもあります。
引越し作業のキズは原状回復義務の対象
原状回復の義務の対象となるキズ等には、当然、引越しの作業によって発生したキズも含みます。
つまり、引越しの際に床・壁などにキズをつけてしまって、そのままにしておくと、貸主からそのキズの補修を求められる可能性があります。
「あのキズは引越し業者がやったものだから、引越し業者に原状回復費用を請求してくれ」という借り主の主張は、通用しません。
原状回復義務は、あくまで借主と貸主の建物賃貸借契約での義務です。
このため、貸主は、借主に対して、中古一戸建ての壁や床などのキズ・ヘコみ・汚れの修復を求めることができます。
もちろん、「貸主」としては、事故を起こした引越し業者に対して、キズの修復を求めることはできます。
ただ、逆に、「借主」の側が、「引越し業者がやったから」という理由で、キズの修復を拒否することは契約違反となります。
中古一戸建ての引越しでは高品質な引越しプラン・パックを利用する
このため、中古の一戸建ての引越しでは、引越し作業中に事故がおこらないように、なるべく高品質なプラン・パックを利用するべきです。
もちろん、引越し業者のスタッフの作業によって床・壁などにキズがついた場合は、引越し業者は、補償する義務があります。
つまり、理屈のうえでは、どのプラン・パックで引越ししてもいい、ということになります。
ところが、引越し業者との補償交渉は、非常に難航することが多いです。
場合によっては、引越し業者に補償に応じてもらえないこともあります。
ですから、そもそも「事故が起こりにくい」高品質な引越しプラン・サービスを利用するべきです。
なお、購入した中古一戸建ての場合は、原状回復費用そのものについては、気にする必要はありません。
当然ながら、事故そのものについては注意しなければなりません。
事前に壁・床のキズの有無をチェックする
中古の一戸建ては元々あったキズとの区別は難しい
中古一戸建ては、元々、何らかの形で床・壁キズがあります。
このため、仮に引越し業者が壁や床にキズをつけたとしても、引越し業者に「そのキズは以前からあった」と言い張られることがあります。
こうなると、最悪の場合、泣き寝入りしなければならなくなる可能性があります。
引越し業者としてみれば、元々あったキズを直そうとした、(わざとクレームを入れてきた悪質なクレーマーじゃない?)と疑うことがあります。
このため、そう簡単にはキズの修復の交渉には応じてくれません。
また、悪質な引越し業者やスタッフは、意図的にそのような主張をする場合があります。
そうならないためにも、なるべく引越しの前に壁・床のキズをチェックしてください。
引越しの事故に備えて「原状」の証拠=写真を撮っておく
また、壁・床のキズをチェックした際には、写真を撮っておいてください。
これは、引越しの作業で壁・床にキズがついた場合に、引越し業者と補償交渉をする際の証拠とするためです。
この際、必ずスマホやデジカメではなく、フィルム式のカメラで写真を撮ってください。使い捨てカメラやインスタントカメラで大丈夫です。
スマホやデジカメの写真は加工が容易なため、補償交渉の際の証拠としては使いづらいからです(何もないよりはマシですが)。
引越しでキズが「増えた」ことを照明する
すでに述べたとおり、引越し業者としては、「元々あったキズではないか?」と疑ってかかるため、そう簡単に修理には応じません。
補償交渉の際、引越し業者を説得するためには、「キズが新しく増えた」という証拠が重要となります。
引越し前と比べて、家の壁や床にキズが増えている、ということは、引越しの作業で壁や床にキズがついた、という推測が成り立ちます。
この推測を間接的に補強する証拠が、元々の状態=「原状」の写真です。
ですから、なるべく事前に壁・床のキズをチェックしたうえで、写真を撮っておいててください。
参照:家具・壁・床のキズが多い―引越しのトラブル・事故の傾向
参照:これで引越し業者との補償交渉もバッチリ!引越しの事故の対処7つポイント
「原状」の写真は不当な原状回復請求を拒否することもできる
ちなみに、賃貸の中古一戸建てを退去する際には、借主は、引越し業者と同じように、建物の修理(=原状回復)を求められる立場になります。
この退去の際の原状回復請求でも、原状を撮影した写真は役に立ちます。
悪質な不動産屋や貸主は、元々あった建物のキズについても原状回復の請求をすることがあります。
この際、入居時の写真を提示することで、そのキズが元々あったキズであることを主張できます。
その結果、不当な請求を拒否することができます。
このような点からも、中古の一戸建てに引越しをする場合は、写真撮影が非常に重要です。
中古一戸建ての引越しでは壁・床・階段の養生に注意
中古一戸建ては室内階段の事故が多い
中古一戸建てへの荷物の搬入作業では、引越し業者には、壁・床・階段の養生を徹底してもらってください。これらの箇所は、非常にキズがつきやすい箇所です。
特に、室内の階段は、最も事故が起こりやすい場所です。その原因は以下のとおりです。
- 設計が古い建物の場合、新築のもの以上に狭いので、特に壁に家具(特に幅の広い家具。和ダンスなど)が接触する。
- 設計が古い階段の場合に手すりがあると、非常に狭くなり、無理な体制で家具を運ぶことになり、事故の可能性が高くなる。
- 階段が老朽化している場合、重い荷物(特に和ダンス)の重さに耐えきれずに階段そのものが破損することがある。
- 階段での作業なのでスタッフがふらついたりバランスを崩したりして、特に重い家具を接触させやすい。
- 設計が古い建物の場合、階段に踊り場がなく、荷物の落下やスタッフの転倒が大事故につながる。
- 狭い場所で荷物を持ち上げる必要があるため、想像以上に腕力が必要となり、荷物を落としたり、バランスを崩して荷物を壁に接触させやすい。
- 大きな家具・家電製品(特に冷蔵庫)を運ぶ際に階段の踊り場での方向転換のためいったん荷物を置くことにより、床にキズがつきやすい。
- 曲がり角ではギリギリの幅で家具・家電製品を回すため、壁にすりキズがつきやすい。
- 特に古い設計の場合、階段が吹き抜けになっていないため、天井に背の高い家具(主に洋服ダンス)が接触してキズがつきやすい。
- 床を養生するマットを新しい靴下で踏むため、滑って壁にぶつかる。
もちろん、こうした細かい原因を覚えておく必要はありません。とにかく「中古一戸建ての階段では事故が多い」ということは覚えておいてください。
和室の畳の汚れに注意
引越し業者のスタッフが靴下を履き替えないと畳が汚れることも
また、和室がある場合は、汚れた靴下による畳の汚れにも注意してください。
通常、大手の引越し業者は、引越し先(新居・卸地)の建物に入る前に新品の靴下に履き替えるサービスをおこなっています。
ただ、すべての引越し業者がそのようなサービスをしているとは限りません。
また、大手の引越し業者であっても、スタッフがうっかり新品の靴下を忘れてくることもあります。
「畳の汚れ」は原状回復義務の対象
このため、汚れた靴下でそのまま作業をしてしまい、靴下の汚れが畳に移ることもあります。
特に雨の日の引越しの場合は、靴下が濡れてしまいます。
汚れたうえに濡れた状態の靴下で新品の畳を踏むと、まず間違いなく汚れがつきます。
中古の建物とはいえ、畳を入れ替えている場合は多いと思います。
特に、賃貸の場合は、畳の汚れも、すでに述べた原状回復義務の対象となることがあります。
引越し作業によって畳が汚れてしまった場合は、しっかりと引越し業者に補償してもらってください。
養生資材の汚れに注意
中古一戸建てで使う引越し業者の養生資材は「中古」
また、養生用の資材(特に壁紙用)が新品であるか、または中古であっても汚れがないかどうかを必ず確認してください。
一般的に、中古の一戸建てへの引越しの場合、大手の業者といえども、新品の使い捨て資材で養生をすることがありません。
通常は、「きれいな」中古の養生資材(必ずしも使い捨ての資材とは限りません。大半は耐久資材です)を使います。
この際、養生資材が汚れていた場合は、その汚れが壁紙に移ることがあります。
引越し業者の営業員にはしつこく新品の養生資材を使うように求める
このため、見積もりの際に引越し業者の営業員に、必ず養生に使う資材が新品の使い捨て資材かどうかを確認してください。
重要なことは、営業員に「この客はうるさい人だ」と認識させることです(ですからしつこく念を入れて確認するべきです)。
そういった細かい情報は、営業員が伝達事項として作業指示書等に記載しますので、スタッフにも伝わります。
こうすることで、「特別に」通常は使わない新品の使い捨て資材を養生に使ってくれることがあります(ただし、業者によっては追加料金を請求してきます)。
意外とよくある?中古建物の引越しでの養生テープによる塗装の剥げ・無垢材の毛羽立ち
引越しでは養生テープを貼ってはいけない場所がある
意外に見落としがちな事故として、養生テープを剥がす際に、塗装が一緒に剥がれ落ちたり、木材(特に無垢材)が毛羽立つことがあります。
引越し業者は、壁を養生する際に、養生テープを使って養生用の資材(板ダンボールや巻きダンボールなど)を建物に固定します。
この際、ドアノブなどの金属部分、電源の差込口(コンセント)や照明スイッチなどのプラスチック部分など、塗装されていない場所に養生テープを貼ります。
これは、当然、他の場所に貼ることによって、テープを剥がす際に塗装が剥げたり、木材(特に無垢材)が毛羽立たないようにするためです。
しかし、そう都合よく養生テープを貼っていい箇所がない場合もあり、どこに養生テープを貼っていいか、迷うこともあります。
中古一戸建ては建材・塗装の表面加工が劣化している
特に、中古一戸建ての場合、ペンキ、塗装、木材の表面加工が劣化していることがよくあります。
このため、養生テープのような粘着力が低いテープを貼っただけでも、すぐに表面の塗装や加工が剥げることがあります。
このようなペンキ、塗装、木材の表面加工の剥げも、すでに述べた原状回復義務の対象となる可能性があります。
ですから、こうした養生テープによる事故があった場合も、しっかりと引越し業者に補償してもらってください。
ベテランスタッフでないと防げない養生テープによる事故
この場合、ベテランのスタッフであれば、貼っていい場所の見極めや、養生テープを貼らずに養生用の資材を固定することなどができます。
…が、経験の浅いスタッフは、そのようなことができません。
そもそも、経験の浅いスタッフは、「養生テープを貼ってはいけない場所」があるとは思っていないこともあります
このため、壁紙やペンキによって塗装されている場所に養生テープを貼ることもあります。
引越し業者のスタッフが養生をはずした後に徹底的にチェックする
養生作業の際には、どこに養生テープを貼っているのか、よく見ておいてください。
また、搬入作業が終わり、養生テープを剥がした後に、養生テープが貼られていた箇所の壁紙、ペンキ、塗装、木材の表面加工が剥げていないかどうか確認してください。
万が一これらが剥げていた場合は、すぐに引越し業者と補償交渉に入ってください。
時間が経つと、「それはウチの作業によるものじゃありません」とシラを切られる可能性もあります。
養生を取ったら事故の確認―引越し元(旧居・積地)での養生をはずす作業の注意点
事故はその時その場で補償交渉―引越し先(新居・卸地)の養生をはずす作業の注意点
中古一戸建てでの引越しでは窓吊りに注意
窓吊り作業は最も危険な作業
窓吊り作業は、引越しの作業の中でも、最も事故が起こりやすい、危険な作業です。
窓吊り作業とは、階段では狭くて搬入することができない大きな荷物を、窓から吊り上げる、または吊り下げる作業です。
引越し業者によってその方法は様々ですが、1本のロープで家具を縛り、2人のスタッフが腕力で吊り上げる、または吊り下げる方法が一般的です。
これに加えて、脚立を使って家具を下から押し上げる、または家具を脚立に伝わらせてすり降ろすこともあります。
窓吊りの作業は、スタッフ・建物・家具・家電製品(特に冷蔵庫)に極度の負担がかかる作業です。
このため、負担がかかった家具や建物にキズやへこみが生じる可能性があります。
最悪の場合、荷物が落下する可能性もあります。
参照:細かいキズ・ヘコみに注意―引越し元(旧居・積地)での吊り下げ・窓吊り作業の注意点
参照:落下事故・ヘコみに注意―引越し先(新居・卸地)での吊り上げ・窓吊り作業の注意点
なるべく窓吊りや業務用の家具の組立ては避ける
また、中古一戸建てでの引越しでは、窓吊りや室内での業務用(家庭用は問題ありません)の家具の組立てなど、面倒な搬入はなるべく避けてください。
賃貸の中古一戸建て(いわゆる「貸家」)の場合、時期は未定であっても退去を予定しているものと思われます。
当然ながら、引越しの荷物は、搬入した時と逆の作業で搬出することになります。
となると、次の引越しの際にも、窓吊りや家具の組み立てをすることになり、余計な料金が発生することになる可能性があります。
中古一戸建てでの窓吊りは人件費が高い・時間がかかる・事故の確率が高い
特に、窓吊りの作業は、ある程度のスタッフ(少なくと3人以上、しかも全員経験者)が必要になりますので、人件費がかかります。
また、準備や作業そのものに時間がかかりますので、作業全体の時間も大幅に増えることになります。
なにより、中古の一戸建ての場合(特に瓦屋根の建物の場合)は、事故が発生する可能性が高いものです。
このように、中古一戸建てでの窓吊りはデメリットが多いため、よほどのことがない限り、オススメできません。
まとめ
中古一戸建て(特に賃貸)の引越しは、新築の建物とは違った性質のトラブルが多いです。
事故の発生の特徴は新築の建物とさほど変わりませんが、キズや汚れについては元々あったキズや汚れと区別しにくく、引越し業者との交渉が難航します。
また、古い建物の場合は、建物そのものが老朽化しており、重い荷物(冷蔵庫や金庫など)の搬入により、建物が損壊することもあります。
こうなると、その損壊が建物が原因なのか、引越し業者の作業が原因なのか、判別がつかなくなります。
この他、設計が古いことによる階段や廊下での手すりと荷物の接触事故、瓦屋根での窓吊り作業による瓦の破損(乗り方が悪いと瓦が割れる)など、たくさんの事故の原因があります。
利用者としては、そのすべてに対応できるわけではありませんが、せめて引越し業者に養生くらいは徹底してもらい、壁・床にキズがつかないようにしてもらってください。