「引越し業者のスタッフが養生するんだし、壁にはキズなんてつかないでしょ?」と、思ってませんか?

こんにちは。養生をはずす際には、いつも祈るような気持ちで作業していた、元引越し業者スタッフの管理人です。

引越し元(旧居・積地)で荷物の運び出しが終わったら、引越し業者のスタッフは、養生をはずす作業に入ります。

その間、お客さまは黙ってみていればいいかというと、そうではありません。

実は、養生をはずす作業自体が、意外と事故につながることがあります。

ですから、養生をはずす作業も、漫然と見ていてはいけません。

しかも、養生がはずれた後では、ある意味、お客さまの引越しの作業の中で、最も重要な作業が待っています。

そう、壁や床にキズ・ヘコミ・汚れがないかどうかを確認作業です。

そして、残念ながら壁や床にキズ・ヘコミ・汚れがあった場合は、その時その場で補償交渉をする必要があります。

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引越し元(旧居・積地)の建物で養生をはずすときは意外に事故が起こりやすい

養生をはずした部屋

壁の養生資材(特に板ダンボール・プラスチックパネル)の接触で事故が起こる

養生をはずす作業では、意外に事故が起こります。

特に、はずれた壁の養生資材(板ダンボール・プラスチックパネル)が壁に接触して、壁にキズがつくことがあります。

壁の養生資材は、家具や大型家電の接触から壁を保護するために、そこそこ硬い材質でできています。

角の部分が軽く壁や床に接触しただけでも、簡単にキズがついたり、壁紙が汚れたりします。

また、剥がれた養生テープが壁紙に貼り付いてしまい、剥がす際に、壁紙の表面も剥がれてしまうことがあります。

非常識な未経験者(アルバイト・派遣社員)がやらかすことも…

管理人は、かつてチームリーダーを務めた引越しの際、壁を養生したプラスチックパネルで、階段の壁にキズをつけてしまったことがあります。

チームに入っていた派遣社員(引越し作業の経験無し)が、はずれかかった壁のプラスチックパネルを、なんと「踏み越えた」のです。

その結果、プラスチックパネルの端の部分が壁に接触してキズがつきました。

さすがにこの行動は、管理人もお客さまも想定外でした。

(いくら引越し作業の経験が無いとはいえ、そんなことしたら壁にキズがつくくらいわかるだろ…)と。

お客さまは、もちろん激怒されていました。当たり前ですよね。

養生はずしは「奥から玄関に向かって」

さて、養生をはずすときは、通常は、一番奥の部屋の壁の養生資材からはずしていきます。

すでに述べたとおり、壁の養生資材は硬いですから、壁に接触させるわけにはいきません。

だからこそ、奥から玄関のほうに向かって、順にはずしていきます。

こうして、壁の養生資材を運ぶ際にも、常に養生されている場所を通るようにします。

そして、壁の養生資材をはずし終わってから、床の養生資材をはずしていきます。

養生を「手前から」はずしだしたら要注意

こうすることで、壁や床をキズつけることなく養生資材をはずすことができます。

もちろん、養生テープが壁紙に貼り付いてしまわないように、養生テープは、取ったら丸めてしまいます。

こうした細かいノウハウが、事故を未然に防ぎます。

経験の浅い引越し業者のスタッフだと、いきなり玄関や途中の廊下の養生資材を勝手にはずすことがあります。

また、剥がした養生テープを丸めずに、そのまま放置することもあります。

ちょっとやる気のある(だからあまり怒れないのですが…)、新人のアルバイト・派遣社員の「引越しあるある」ネタのひとつです。

こうした場合、事故が発生する可能性がありますので、注意してください。

引越し作業による壁のキズ・ヘコミと塗装のはがれをチェック

空室

養生していてもキズ・ヘコミができる

さて、引越し業者のスタッフが養生資材をはずしているときは、ぼんやり作業を眺めていてはいけません。

この後、お客さまには、もっとも重要な作業が待っています。それが、「壁と床のチェック」です。

引越し作業では、よほど経験を積んだスタッフ同士が運んだ場合を除いて、家具・家電製品が壁に接触することがあります。

というか、こうした家具・家電製品の接触は、ないほうが珍しいです(だから養生するのですが)。

軽い家具でも勢い次第でキズや汚れがつく

重い家具・家電製品の接触はもちろんのこと、軽い家具であっても、角の部分が接触した場合は、その勢いによっては壁にキズや汚れがつくことがあります。

たとえ、硬いプラスチックパネルで養生がされてあっても、です。

ですから、引越し業者のスタッフが養生をはずした後、養生がしてあった壁であっても、キズ・汚れがないかどうか確認してください。

特に、家具の搬出作業中に、あきらかに接触があった箇所は、重点的チェックしてください。

ペンキ塗りの塗料や無垢材の剥げをチェックする

また、養生はずしの際に、壁のチェック箇所として、養生テープが貼っていた箇所があります。

こうした箇所では、養生テープを剥がすと、一緒にペンキの塗料が剥げる事故があります。

特に中古の建物の場合は、塗装がはがれやすくなっていますので、十分に注意してください。

また、引越し業者のスタッフが、誤って塗装がされていない無垢材の壁・建材・手すりなどに養生テープを貼ることがあります。

こうした場合、養生テープを剥がすと、壁・建材・手すりが毛羽立ってしまうこともあります。

引越し作業による床・階段のキズ・ヘコミをチェック

フローリング

意外と養生していても床・階段がキズつきヘコむことはある

次にチェックするのは、床・階段です。壁と同じように、床・階段も、キズやヘコミができます。

特に、重い家具・冷蔵庫などの重量物を床・階段に置いたり、誤って落としてしまった場合に起こりがちな事故です。

硬い板で養生する壁と違って、床・階段は、あらゆる建物に柔軟に対応できるように、柔らかいマットで養生します。

こういった柔らかいマットでは、あまり床・階段を保護できず、意外とあっさりキズがついたり、ヘコんだりします。

特に、クッションフロアではなく、木材を使ったフローリングの床は、キズ・ヘコミができやすいです。

床・階段には必ず「置かなければならない」

しかも、気をつければ接触させずに済む壁の場合と違って、床・階段の場合は、方向転換の際に、必ず置かなければなりません。

これは、いくらベテランの引越し業者のスタッフ同士が作業していても、1回も床・階段に置かずに家具・冷蔵庫は運ぶのは無理です。

もちろん、なるべく置く回数を少なくするように配慮はしますし、やむを得ず置く場合も、丁寧に扱いますが。

これが経験が浅い引越し業者スタッフとなると、腕力がトラックまでもたないため、小休止も兼ねて何度か置きながら運びます。

この際、経験が浅いと、ゆっくり丁寧に置く、という配慮がなかったりします。腕力がないと、半ば落とすように置く場合もあるでしょう。

最悪の場合、腕力がもたずに、文字通り「落として」しまうこともあります。

こうなると、高確率で床はヘコミます。また、壁に接触している場合は、壁にもキズがつきます。

壁・床・階段のキズ・ヘコミのチェックは「多発地帯」を重点的に

接触事故

壁・床・階段は事故が起こりやすい箇所は?

とはいえ、短時間で、すべての養生していた壁・床・階段をチェックするのは無理です。

そこで、キズやヘコミができやすい箇所だけでも重点的にチェックしてください。

キズがつきやすい壁・床・階段の箇所は、つぎのとおりです。

  • 廊下の曲がり角
  • 階段の踊り場
  • 階段の始まりと終わり
  • 部屋(特に台所・キッチン)の出入口
  • 玄関

引越しの事故は「方向転換」で起こる

こういう場所は、大きな家具や冷蔵庫などの方向転換をします。

この際、家具・冷蔵庫が曲がり角や部屋の出入り口の内側(角)や外側に接触する事故が多発します。

特に本棚、洋服ダンス、ワードローブのような背の高い家具や、冷蔵庫、和ダンスなどの重い家具が通った壁は、注意してチェックしてください。

また、方向転換で曲がりきれない場合は、いったん、これらの場所に家具・冷蔵庫を置いて、立てた状態で方向転換をします。

この「置く」作業を丁寧にしないと、床がヘコミます。

ですから、特に重い冷蔵庫や和ダンスなどを置いた形跡がある床・階段は、重点的にチェックしてください。

事故があったらその時その場で写真撮影・補償交渉

怒る主婦

事故があったらまずは証拠の確保

もし壁・床・階段に、新たにキズ・ヘコミ・汚れができた場合や、養生テープによって塗装の剥げや無垢材の毛羽立ちがあった場合は、すぐに補償交渉をしてください。

時間が経てば経つほど、お客さまには不利になります。

まずは、証拠の確保が大事です。すぐにカメラで事故があった箇所の写真撮影をしてください。

この際、必ずフィルム式のカメラで撮影してください。使い捨てのカメラやインスタントカメラで大丈夫です。

逆に、スマホのカメラやデジカメの場合は、加工が簡単なので、(ないよりマシですが)ほとんど交渉材料にはなりません。

補償交渉はその時その場で

なお、その場で補償交渉をせずに後で補償交渉をした場合、交渉が難航することがあります。

言葉は悪いですが、「現行犯」でないと、引越し業者としては、(最初からあったキズ・ヘコミ・汚れじゃないの?)と疑わざるをえません。

もちろん、悪質なクレーマーが、引越し業者がやったわけではないキズ・ヘコミ・汚れまで補償させようとすることあもります。

そういう意味では、引越し業者が、全部の補償交渉を、何も意地悪で難航させているわけではないのです。

ですから、ある意味では、引越し業者の補償交渉の担当者が、会社や上司に「言い訳」をしやすいようにすることが重要です。

そのための、証拠の確保であり、その時その場での交渉なわけです。

ですから、壁・床・階段にキズ・ヘコミ・汚れがあった場合は、すぐに作業を中断して、引越し業者の支店・営業所の事故担当者に連絡してください。

補償交渉をしなければ貸主・オーナーに責任を取らされる

青ざめる主婦

賃貸物件の「原状回復義務」とは?

「別にこれから出ていく建物なんだから、ちょっとのキズくらいいいんじゃないの?」と思われるかもしれません。

もちろん、引越し元(旧居・積地)の建物がお客さまご自身が所有されているのであれば、問題はないでしょう。

ただ、賃貸の物件ということであれば、そうはいきません。

建物の賃貸借契約では、借主には、必ず「原状回復義務」が課されます。

この「原状回復義務」とは、故意、過失、善管注意義務違反などによって発生した物件の劣化を回復させることです。

通常の使用による劣化や自然損耗の回復までは含みません。

わかりやすく言えば、わざと、ミスで、あるいは通常の管理を怠ったことによる物件の劣化を、借主の負担で回復させる義務です。

補償交渉をしない=「善管注意義務」違反

引越し業者のミスによる事故があるにもかかわらず、補償交渉をせずに放置するというのは、建物の管理を怠った、ということになります。

つまり、善管注意義務違反(=通常の管理を怠ること)として、原状回復義務の対象となります。。

ですから、引越し業者のミスによる事故であっても、その補償交渉をしない場合は、借主であるお客さまご自身の負担で、キズ・ヘコミ・汚れを直さなければなりません。

そういう意味でも、壁・床・階段にキズ・ヘコミ・汚れを見つけた場合は、その時その場ですぐに補償交渉に入ってください。

まとめ

養生資材をはずす作業は、一種独特の緊張感があります。

引越し業者のスタッフは、作業中の壁・床・階段への接触があると、(ヤバイ、いま当たったよな?)と、よく覚えているものです。

そして、その箇所は自分で養生資材をはずして、キズ・ヘコミ・汚れがないことを確認して、ホッと胸をなでおろすのです。

では、引越し業者のスタッフが、壁・床・階段のキズ・ヘコミ・汚れを見つけた場合はどうなるのでしょうか?

非常に残念なことですが、おそらく、引越し業者のスタッフが100人いれば、99人は何も言わないでしょう。

「そんなバカな!?」と思われるかもしれませんが、引越し業者のスタッフには、わざわざ事故をお客さまに報告するインセンティブはありません。

もちろん、明らかに見てわかるような大事故であれば話は別ですが。

つまり、壁・床・階段の小さなキズ・ヘコミ・汚れは、お客さまご自身の目でチェックして、見つけなければならないのです。