「引越しの見積書って何書いているのかよくわからない。結局、どこをチェックすればいいの?」引越し業者から受取った見積書を見て、困ったこと、ありませんか?
こんにちは。「営業さん」の見積書を見ても、(これって、お客さまが読んでも本当にわかっていただけるの?)と、いまいちピンとこない、元引越し業者スタッフの管理人です。
この記事では、引越し業者を利用するすべてのお客さまに向けた記事です。
この記事を読むことで、引越しの見積書・見積もりの何をチェックすればいいのかがわかるようになります。
それだけではなく、最終的には、より安い料金・費用での引越しができることを目指しています。
引越しの見積書や見積もりの内容は、当然、お客さまがすべての内容を把握できないといけないものです。
ところが、実際には、(字が汚い・読めないのは論外ですが)お客さまが読んでも、よくわからない見積書や見積もりの内容となることが多いです。
これは、引越し業者の営業員が、わざとわかりづら内容にしている場合もありますし、ただなんとなくそうしているだけの場合もあります。
もっとも、見積書に書いている情報や見積もりの内容のなかで、お客さまにとって大事なポイントは、そう多くはありません。
この記事では、そういったポイントを紹介しています。
見積もり≒引越しの料金・費用の内訳
「料金・費用の合計額がわかればいい」では引越し業者の思うツボ
ポイントの紹介に移る前に、まず、そもそもお客さまにとって、引越しの見積書とは何なのか、ということを解説しておきます。
この「見積書がどういうものなのか」をご存じないと、ポイントがわかりづらくなります。
何よりも、見積書を活用して、引越しの料金・費用を安くできなくなります。ですから、少しだけお付き合いください。
引越しの見積書で最も重要なポイントは、料金・費用の合計金額です。これは、当たり前といえば当たり前の話です。
「料金・費用の合計金額さえわかれば、細かい話はどうでもいいんじゃないの?」という考え方もあるでしょう。
見積書に書かれた料金・費用の合計額よりも安くするつもりがないのであれば、正直なところ、ここから先を読む意味はありません。
逆に、「少しでも引越しの料金・費用を安く抑えたい」というお客さまは、続きをご覧ください。
見積書=引越しの設計図
引越し業者によっても細かな違いはありますが、見積書は、引越しの料金・費用の内訳・詳細がわかるような書式になっています。
引越し業者の営業員は、引越しの料金・費用の内訳・詳細をはっきりと書かかなければなりません。
もちろん、引越し業者の関係者だけでなく、引越しの素人であるお客さまにも、しっかりと内容がわかるように、です。
もっといえば、「私たちは、お客さまのお引越しのために、○台の○トントラックと、○人のスタッフを用意し、これこれこういう作業をします。そのために必要な料金・費用は、それぞれ○円、○円、○円です」といったような、いわば引越しの仕様書、あるいは設計図のようなものが、引越しの見積書です。
理想的な見積書は他の引越し業者が見てもわかるもの
より重要なのが、他の引越し業者が見てもその内容がわかるものでないといけません。
つまり「あ~、この内容でしたら、弊社では○○円でできますよ」というような、他の引越し業者との価格交渉に使えるレベルのものであるべきです。
このような「価格交渉=料金・費用を安く抑えること」に使えるレベルの見積書でなければ、引越しの見積書の意味はありません。
こういった、引越しの内容と料金・費用を可視化・透明化したものが、「お客さまにとっての見積書」といえます。
ほとんどの引越し業者の見積書は社内向け
ところが、悪質な営業員(というかほとんどの営業員)は、引越しの料金・費用の内訳・詳細を書かない、あるいはお客さまにわからないように書きます。
引越し業者の営業員としては、支店・営業所に見積もりの内容・データを、社内システムにインプットすればいいだけです。
なにも、見積書に料金・費用の内訳・詳細を書く必要はありません。
ただ、引越し業者の営業員は、「料金・費用の合計額」は、見積書にしっかりと明記します。
これは、お客さまが最も強い関心を持つ部分だからです。
引越しの見積書は「料金・費用の合計額」よりも「荷物の量」が重要
他のことは、書かないか、またはお客さまがわからないような書き方をします。
スタッフの人数くらいは書くでしょうが、荷物の量(何立方メートル・㎥なのか)や、トラックの種類などは、下手したら書いてくれませんし。
書かれていたとしても、お客さまがパッと見てもわからない書き方(社内ルールの書き方)をします。
もちろん、これは他の引越し業者との価格交渉に使われないようにするためでもあります。
ですから、「料金・費用の合計額さえわかればいい」という考え方は、悪質な引越し業者の思うツボです。
これでは、特に重要な「荷物の量」の情報がないため、他の引越し業者との価格交渉がしにくくなるからです。
そういう意味では、引越しの見積書は、「料金・費用の合計額」よりも「荷物の量」が重要である、といえます。
引越しの料金・費用=(荷物の量×移動距離)+スタッフの人数+新品資材の料金+別途費用
では、具体的に、引越しの料金・費用の内訳・詳細がわかるためには、何が書かれていればいいのか、という点について説明していきます。
見出しにも書いていますが、ほとんどの引越しの料金・費用は、以下の式で算出されます。
引越しの料金・費用=(荷物の量×移動距離)+スタッフの人数+資材の料金+別途費用
これらの内容は、以下の5つのポイントに分解できます。
- 荷物の量=必要なトラックの種類と台数
- 移動距離=どこからどこまでの引越しか
- スタッフの人数
- 資材の料金(特に新品の使い捨て資材の金額)
- 別途費用(引越し業者の有料サービス)
このうち、移動距離については、別にわざわざ見積もりをしなくても、引越し元(旧居・積地)と引越し先(新居・卸地)の住所さえわかれば、すぐに算出できます。
残りの4つの要素が、実際に訪問見積もりをしてみないとわからない点です。別途費用については、特殊な作業もあるため、さらに3つに細分化されます。
つまり、これらの3+3=6つのポイントが、引越しの見積書の重要なポイントとなります。
そして、これらの6つのポイントがはっきりと明記されていれば、もっと引越しの料金・費用を安く抑えられる可能性が出てきます。
【ポイント1】荷物の量=トラックの容量を見積書に明記してもらう
荷物の量によって引越しの料金・費用の算出に必要な要素がほとんど決まる
引越しの料金を決める要素のうち、最も大きなものが、荷物の量です。
荷物の量が多い場合、トラックの容量や台数、移動にかかる燃料代・高速料金、スタッフの人数、梱包に必要な資材の量は多くなります。
逆に、荷物の量が少ない場合、これらは少なくなります。
これだけ重要な要素ですから、荷物の量を正確に割り出せるかどうか。これが、引越し業者の営業員の腕の見せどころになります。
普段の日常生活を送っているお客さまの部屋の状態から、過不足なく正確に荷物の量を割り出せる。これが優秀な営業員です。
荷物の量を水増しして、高い料金・費用をふっかけてくる。こういうのは、(少なくともお客さまにとっては)優秀な営業員ではありません。
このように、引越しの料金を決める要素のうち、最も重要な「荷物の量」が、見積書に明記されているかどうか。これが、重要なポイントとなります。
見積書には必ず【○○㎥】で荷物の量を明記してもらう
これだけ大事な荷物の量ですが、引越しの見積書には、必ず数字+単位(㎥)で書いてもらってください。
つまり、「10㎥」「25㎥」といような書き方です。
よく見積書を見てください。営業員から渡された見積書には、荷物の量が「数字+単位(㎥)」で書いていないことがあります。
こういう場合、見積書には、よくわからないアルファベット(いわゆる符丁・暗号)が書かれていたり、「正」マークで書かれていたりします。
これは、荷物の量を(お客さまにというのは当然ですが、他の引越し業者にも)把握させないようにしている可能性があります。
お客さまが荷物の量を把握できない見積書など、意味がありません。
通常、引越し業者では、5㎥刻みで荷物の量を計算しています。これは、トラックの容量が5㎥刻みだからです。
ですから、そもそも見積書を書く段階で、引越しの営業員が荷物の量を「数字+単位(㎥)」で把握していない、ということはありえません。
引越し業者の営業員に荷物の量をはっきり聞いて書いてもらう
このように、引越し業者の営業員は、見積書を書く段階で、荷物の量を「数字+単位(㎥)」で把握しています。
見積書を見ても荷物の量が「数字+単位(㎥)」、引越し業者の営業員に書いてもらってください。
例えば、「15㎥」とか、「30㎥」のような書き方です。
この際、あれこれと理由を述べて荷物の量を書こうとしない営業員に対しては、次のように、ズバッと言いましょう。
「ウチの荷物は何立米(ナンリュウベ)ですか。ちゃんと書いてください」
「何立方メートル(ナンリッポウメートル)ですか」と聞いてもいいのですが、引越し業者の営業員を牽制する意味でも、より業界人っぽく「何立米(ナンリュウベ)ですか」と聞いたほうがいいでしょう。
「ナンリュウベイ」ではなく、最後の「イ」を発音しない「ナンリュウベ」です。
これほど追求されても、なお荷物の量を「数字+単位(㎥)」で書こうとしない引越し業者は、利用の検討に値しません。
速やかにお引き取り願いましょう。
できればトラックの種類・台数を書いてもらう
次に、これはできればでいいのですが、トラックの種類と台数も書いてもらいましょう。
「できれば」と、控えめにしたのは、理由があります
荷物の量=トラックの容量です。荷物の量さえはっきりと書かれていれば、必要なトラックの種類と台数は、自動的にわかります。
また、これは引越し業者の側の都合ですが、引越し当日に、支店・営業所単位で、どれだけのトラックが必要で、どれだけのトラックが手配できるのか、見積もりの当日ではわからない場合がほとんどです。
ですから、引越し業者の営業員としても、見積もりの段階では、トラックの種類と台数までは書けない、という事情もあります。
道幅が狭い場所の引越しの見積書にはトラックの種類・台数を書いてもらう
なお、引越し元(旧居・積地)や引越し先(新居・卸地)の道幅が狭い場合、使えるトラックの種類・台数が限られます。
このような場合は、引越し業者の都合よりも、道幅の制限のほうが優先されます。
ですから、その引越しに必要なトラックの種類・台数は、はじめから決まっていますし、見積書にも書けます。
この場合は、見積書に、引越し当日に使うトラックの種類・台数も書いてもらいましょう。
【ポイント2】引越し当日に作業するスタッフの人数を見積書に明記してもらう
引越し業者のスタッフの人数を数字で書いてもらう
荷物の量がわかれば、引越しに必要なスタッフの人数=人件費もわかります。
もちろん、荷物の量以外に人数を決める要素がないわけでばありません。ですが、きまめてレアなケースです。
例えば、極端に手作業で荷物を運ぶ距離が長い(業界用語では「横持ち」の距離が長い)場合などがあります。
こうした場合を除いて、一般的な住宅は、「荷物の量≒スタッフの人数」と考えていただいて結構です。
当日に作業するスタッフの人数は、料金・費用の金額を決める重要な要素です。
ですから、スタッフの人数も、必ず数字で「○人」と見積書に明記してもらってください。
引越し業者の「スタッフの質」の注文は難しい
また、お客さまの心理としては、より能力が高く、経験が豊富なスタッフによる引越しを希望されると思います。
このような「スタッフの質」の注文は、不可能ではないものの、実際はかなり難しいのが実情です。
例えば、「ウチの引越しには、経験の浅いアルバイトや派遣社員には来てほしくないなぁ…」というお気持ちはわかります。
ですが、引越し業者のチーム編成を正社員や契約社員だけにするとなると、人件費だけでも相当な金額になります。
引越し業者としては、よほど暇な時期(例えば6月の平日など)や、追加料金でもいただかない限り、ご要望には応えられません。
もちろん、追加料金を払っても構わない、というのであれば、引越し業者の営業員にご要望を出してみてください。
【ポイント3】引越しで使う使い捨ての新品の資材の値段を必ず見積書に明記してもらう
引越し業者から「買う」資材の値段は後から効いてくる
意外と見落としがちですが、「必ず」見積書でチェックしてほしいポイントがあります。
それは、お客さまが引越しで使う、新品の使い捨ての資材(ダンボールなど)の値段です。
なぜ見落としがちなのかといえば、そもそも引越し業者の営業員が、資材の値段を書きたがらないからです。
もちろん、これにも理由、それもお客さまにとっては非常に困る理由があります(あとで説明します)。
資材の値段が書いていない、ということは、引越しの料金の(一部の)内訳・詳細が不透明だということです。
この不透明な見積もりは、次のような場合に引越し業者とのトラブルの原因となります。
- 資材が余った場合
- 引越しをキャンセルする場合
- 【重要】引越し業者を乗り換える場合
「資材はサービス=無料」は本当?
よく引越し業者の営業員は、「資材はサービス=無料ですから、お金はいりませんよ」というセールストークをします。
これ、本当に無料でしょうか?
引越し業者がお客さまに提供する資材、例えばダンボール。
これは、引越し業者の敷地から生えてくるんでしょうか?
それとも、空から降ってくるんでしょうか?
そんなことはありませんよね。当然、ダンボールのメーカーに作ってもらっています。
では、ダンボールのメーカーは、引越し業者にダンボールを無料で差し上げているんでしょうか?
これもちがいますよね。
ダンボールのメーカーは、引越し業者にお金を請求しますし、引越し業者もお金を払っています。
「資材はサービス=無料」は「嘘」
では、引越し業者がダンボールのメーカーに払っているお金はどこから出ているのか?
もちろん、お客さまのお財布から出ています。
採算度外視、赤字覚悟で、ダンボールの値段を無料にしている引越し業者って、本当にあると思いますか?
もちろん、たまたまそのくらいの値引きをすることはあるでしょう。
でも、ほとんどの引越しでは、資材の料金も合計金額に含まれています。
つまり、「資材はサービス=無料」なのではありません。
単に資材の料金を書いていない、つまり引越し料金の内訳・詳細を不透明にしているだけなのです。
親切に見せかけておいて、実は料金・費用の内訳・詳細を不透明化・ブラックボックス化しているわけです。
本当に不誠実な話ですね。
見積書には資材の料金の合計額と内訳を必ず明記してもらう
以上のように、「引越しの資材はサービス=無料」という主張(言い訳?)は、引越しの料金の内訳・詳細を不透明にしているだけに過ぎません。
これは、引越し業者にとって、一方的に都合のいい話であって、お客さまにとっては不都合な話です。
見積書には、資材の料金の合計額と内訳をしっかりと書いてもらってください。
ここでいう内訳とは、各資材の単価と数量のことです。
資材の金額について何も書こうとしない営業員には、口頭でしっかり書いてほしいことを伝えましょう。
引越し業者の営業員は、当然、個々の資材の単価を知っていますし、合計金額も計算できます。
にもかかわらず、資材の金額を書くことを断ったり、あれこれ言い訳やセールストークをして書こうとしない場合もあります。
これは、よほど「やましいこと」(あとで詳しく解説します)があるか、お客さまの要望に応えるつもりがないのでしょう。
こういう引越し業者の営業員には、早々にお引き取り願いましょう。
資材の料金を見積書に書いてもらう3つのメリット
引越し業者の営業員に、資材の合計金額と内訳を見積書に書いてもらうメリットは、3つあります。
裏を返せば、引越し業者にとってはデメリット(すでに述べた「やましいこと」)が3つある、ということです。
その3つのメリットは、以下のとおりです。
- 資材が余ったら「返金」してもらえる(可能性がある)
- キャンセルのときに資材の料金で揉めることがない
- 引越し業者の「乗換え」のときにスキを与えない
【メリット1】資材が余ったら「返金」してもらえる(可能性がある)
「資材が無料」の衝撃の理由
「なんでダンボールはサービス(無料)にしてるんですか?」かつて管理人は、先輩のスタッフに聞いたことがあります。
その答えは…
「余ったダンボールを引取るときに、返金しなくてもいいからだよ」
つまり、「タダで差上げたものですから、引取るときもタダですよ(=返金しませんよ)」という理屈です。
そのときは、「そういうものか」と、特に気にかけませんでしたが、よく考えてみるとおかしな話です。
余った資材を「返品」するなら「返金」してもらうべき
ダンボールなどの新品の資材は、すでに述べたように、よほど値引きした場合は別として、無料ではありません。
すべて、引越しの合計の料金・費用に含まれています。
つまり、お客さまがお金を払って「買取った」ものです。タダでもらったものではありません。
そのお金を払って買取った資材を返すのですから、払ったお金を「返金してもらう」べきです。
「無料」(ということにしている)の資材を返品する場合は無料で?
このように、引越し業者は、余った資材の返金をしないで済ませています。
(無料で貰ったものだから返すときも無料で返さないと…)という、お客さまの善意を利用しているわけです。
繰り返しますが、ダンボールなどの新品の資材は、無料ではありません。
有料なのに値段が不透明になっているだけです。
本来「有料」の資材が「無料」で返品されると、結果として、引越し業者が、その資材を無料で手に入れることになります。
そして、その資材の本来の料金は、お客さまが負担することになります。
こんなおかしな話はないですよね?
見積書に資材の値段が書いていれば交渉する必要がない
ですから、新品の資材を使わずに「返品」するのであれば、「返金」もしてもらいましょう。
この「返金」の要求の際に、資材の値段が見積書に書かれていないと、引越し業者と以下の点について揉めることになります。
- そもそも返金してもらえるのか
- 返金される金額はいくらなのか
すでに述べたとおり、引越し業者は、「無料で提供したものですので無料で引取ります」という屁理屈で、そもそも返金に応じようとはしません。
交渉の結果、どうにか返金に応じてもらえたとしましょう。
この場合でも、資材の値段が不透明ですから、ほんのちょっとの返金しか受けられない可能性があります。
他方、見積書に資材の値段や内訳が書かれていれば、話は簡単です。
その内訳にもとづいて、余った資材の金額を計算して、引越し業者に返金を要求すればいいだけの話です。
あれこれと理由をつけて返金してもらえない場合は、余った資材は、メルカリで売ってしまいましょう。
タダで引越し業者に返すよりは、多少でも引越し料金の足しになります。
【メリット2】キャンセルのときに資材の料金で揉めることがない
キャンセルの際にも資材の「価格交渉」が発生する
順調に準備をしていても、引越しをキャンセルしなければならないことも、ときにはあるでしょう。
この場合、新品のダンボールなどの資材をすでに使ってしまった場合、その資材は買取りとなります。
見積書に資材の値段が書いている場合は、その値段をもとに、使った分だけの料金を払うことになります。
ところが、見積書に資材の値段が書いていない場合は、下手すると「価格交渉」となる可能性があります。
悪質な引越し業者は「吹っかけてきて」キャンセルを断念させようとする
仮にキャンセルになったとしても、ほとんどの引越し業者は、後でまた利用してもらうことを期待します。
ですから、引越し業者は、適正な値段での資材の買取りを求めるでしょう。
少なくとも、管理人が勤めていた引越し業者では、そのような対応でした(見積書に資材の値段を書いていない営業員が多かったですが…)。
ところが、一部の悪質な引越し業者では、お客さまからのキャンセルがあると、資材の買取りに法外な値段を要求する場合もあります(あくまで管理人が同僚、先輩、一部のお客さまなどに聞いた話です)。
これは、キャンセルを断念させるため、あるいは、資材の買取りで不当に利益を得るためにしていることです。
見積書に資材の値段が書いている場合は、そのような価格交渉は発生しません。
見積書の値段にもとづいて、使った資材の金額を計算して、引越し業者に支払えばいいだけの話です。
ちなみに、未使用の資材までは買取る必要はありませんが、お客さまの送料負担で返品するか、または別途手数料が発生します。
「サービス=無料」の資材は「無料だから買取る必要はない」?
なお、引越し業者がサービス=無料(くどいようですが実質的には有料)としている資材ですが、こうは考えられませんか?
つまり、「資材は無料なんだから、キャンセルになった場合に、資材の有料での買取りを強制されるのはおかしい」と。
ただ、残念ながら、この理屈は通用しません。
というのも、あくまで「サービス=無料」としている資材は、「ご成約の場合は」という条件付きのものです。
キャンセルとなった場合には、「無料」とはなりません(もともと無料じゃありませんが…)。
【メリット3】引越し業者の「乗換え」のときにスキを与えない
引越し業者は意外と簡単に「乗換え」られる
実は、引越し業者は、乗換えることができます。
より具体的にいえば、いったん、ある引越し業者の利用を決めた場合であっても、別の引越し業者が、より安い料金を提示することもあります。
この際、最初の引越し業者をキャンセルして、後の安い料金を提示した引越し業者を利用するのです。
ちなみに、引越し作業当日の3日前までは、キャンセル料はかかりません(標準引越運送約款第21条第1項)。
- 引越しの3日前まのキャンセルの場合は無料
- 引越しの前々日のキャンセルの場合は20%以内
- 引越し前日のキャンセルの場合は30%以内
- 引越し当日のキャンセルの場合は50%以内
標準引越運送約款第21条(解約手数料又は延期手数料等)
1 当店が、解約手数料又は延期手数料を請求する場合は、その解約又は受取日の延期の原因が荷送人の責任によるものであって、解約又は受取日の延期の指図が見積書に記載した受取日の前々日、前日又は当日に行われたときに限ります。ただし、第3条第7項の規定による確認を行わなかった場合には、解約手数料又は延期手数料を請求しません。
(第2項以下省略)
出典:国土交通省「標準引越運送約款」
ですから、意外と気軽にキャンセルや乗換えはできてしまいます。
そもそも、引越しは、「本来は」どの会社のサービスであっても一緒のものです(実際はそうとも言い切れませんが…)。
乗換えたところで、お客さまには、特にデメリットはありません。
引越し業者は何としても「乗換え」は防ぎたい
ところが、引越し業者としては、「乗換え」など、とんでもない話です。
引越し業者は、会社自体が売上に非常に厳しいです。その営業員ともなれば、自分の成績のことを非常に気にします。
やむを得ないキャンセルは仕方ないにせよ、「乗換え」のキャンセルとあっては、あの手この手を使って、何としても防ごうとします。
ですから、よほど交渉力に自信がある場合を除いて、引越し業者を乗換える際には、「乗換え」であることを言わずにキャンセルするべきです。
法外な値段をふっかけてでも「乗換え」を防ぐ
このような、売上にこだわる引越し業者と営業員の事情があります。
このため、ときには、資材の値段を「吹っかけて」でも、乗換えを思いとどまらせようとすることがあります。
この場合も、見積書にあらかじめ資材の値段が書いていれば、法外な値段を請求される可能性は低いです。
ここで「可能性は低い」と述べたのは、引越し業者や営業員が「見積書の値段とキャンセルの場合の値段はちがう」という屁理屈をいう可能性もあるからです。
資材の値段が、見積書のものとキャンセルの場合のものとが同じなのか、別なのかは置いておきますが、法外な値段を要求する行為は、立派な(?)契約違反です。
標準引越運送約款第21条(解約手数料又は延期手数料等)
(第1項および第2項省略)
3 解約の原因が荷送人の責任による場合には、解約手数料とは別に、当店が既に実施し、又は着手した附帯サービスに要した費用(見積書に明記したものに限る。)を収受します。
(第4項省略)
出典:国土交通省「標準引越運送約款」
ここにあるとおり、引越し業者が解約手数料(=キャンセル料)以外の費用を請求できるのは、あくまで「(見積書に明記したものに限る。)」とされています。
ここでは、「費用」のあとのかっこ書となっていますので、費用そのものが具体的に「明記」されていなければ、請求できないと解釈するのが自然でしょう。
もしキャンセルしたあとに、引越し業者や営業員が法外な資材の買取り料金を請求してきた場合は、この標準引越運送約款の条項を盾に、支払いを拒否しましょう。
それでも揉める場合は、運送業者である引越し業者を監督する、国土交通省に通報しましょう(国民生活センターや消費者センターは、引越し業者を監督する権限がありません)。
【ポイント4】引越し業者との作業分担を明記してもらう
何をどの程度まで梱包しなければいけないかを確認する
引越しでは、引越し業者とお客さまとで、お互いに協力することが重要となります。
この点について、どの作業をどちらが担当するのかを決めておかないと、作業当日に揉めることになります。
引越し業者のチームリーダーとして現場で働いているときに、最も困ることのひとつが、「荷物を梱包していない」お客さまです。
それも、「本当は梱包しなければいけないのを知っていたんですけど、間に合いませんでした。ゴメンナサイ!」というパターンではありません。
「そんなに梱包しなきゃいけないの?営業の人そんなこと言ってませんでしたよ?」という、悪気がない(悪気があると最悪ですが…)パターンが困ります。
ですから、引越し業者の営業員には、引越し業者との作業分担を確認しておいてください。
特に重要な点は、荷物の梱包です。
プランによっては、お客さまが一切梱包しなくてもいいプランもありますが、これは例外といえます。
たいていのプランは、お客さまご自身による梱包が必要です。
このため、特に引越し業者の営業員とは、見積もりの際には、何を梱包しなければいけないのかを確認しておいてください。
【ポイント5】家具・家電製品の分解・組立て費用を明記してもらう
ほとんどの作業は引越し業者が無料で対応している
大型の家財や家電製品がある場合は、その分解・組み立て、取り付け・取り外し・配線など、運搬以外の作業が伴うことがあります。
これらの作業は、引越し業者によって、無料の場合もありますし、有料の場合もありますので、確認しておいてください。
一般的に、普通のご家庭にある家具(洋服ダンス、ワードローブ、和ダンス、食器棚)については、特に専門知識がなくても、簡単に分解・組立てができます。
ですから、引越し業者のスタッフが、現場でそのまま対応すること多いです。
料金も、よほど特殊な家具(業務用のものなど)を除いて、無料の場合がほとんどです。
洗濯機の取り付けは比較的簡単な作業ですが、引越し業者によっては有料の場合があります。
電気工事が関係するものは有料が多い
シャワートイレ、エアコン、IHクッキングヒーターなどの電気工事が必要なものは、基本的には有料となります。
こういった電気工事は、一般的な引越し業者のスタッフでは対応できませんので、外部の電気工事業者がやってくれます。
これも、引越し業者が手配してくれます。
もちろん、お客さまご自身で手配される場合は、無理に引越し業者が手配する業者を使う必要はありません。
【ポイント6】オプション作業と料金・価格を明記してもらう
引越し業者によって特徴が出るサービス
引越し業者によっては、荷物の運搬以外にも、さまざまなオプション作業をおこなってくれることがあります。
これらのオプション作業は、有料の場合もあります。
このため、オプションの利用を検討している場合は、見積もりの段階で、営業員に確認しておいてください。
このオプション作業は、サービスの差別化のために、引越し業者が力を入れていることがあります。
中には、害虫駆除、地震対策、盗聴器発見のように、引越しの時でもなければしにくいようなことに対応している業者もあります。
このため、オプション作業の内容で引越し業者を決めるというのも、ひとつの方法です。
いざとなったら「乗換えられる」見積書を目指す
他の引越し業者に見せられる見積書で価格交渉をする
さて、長々と見積書を確認するポイントを説明してきましたが、最後に言っておきたいことがあります。
それは、「どうしてこんなに細かく見積書に書いてもらう必要があるの?」ということです。
その答えは「お客さまの引越しがどういう引越しなのかを『見える化』(可視化)するため」です。
というか、そもそも「見積書」って、そういうもののはずなんですが…
そして、その見積書は何に使うのかといえば、結局は「相見積もり」に使うのです。
お客さまにとって理想的な見積書は、「訪問見積もりに来ていない引越し業者でも料金・費用・値段を算出できる見積書」です。
それこそ、見積書をFAXで送信して「ウチだったらこのくらいの金額ですね~」というやり取りができる。
このくらい、見積書の内容がはっきりしていなければなりません。
こういうやり取りができるからこそ、引越し業者の間での価格競争と、引越し業者との価格交渉ができることになります。
「引越しの価格交渉は、見積書の段階から始まっている」ということを肝に銘じて、見積書を確認しましょう。
まとめ
管理人は、「営業さん」の見積書を見るたびに、いつも思ってました。
(なんて不親切な見積書なんだろう…)と。
よく考えてみると、営業員の立場としては、料金・合計額以外の部分は、なるべく不透明・ブラックボックスにしておきたいでしょう。
また、料金・費用の合計額以外の部分を、わざわざ透明化する動機がありません。
そうなれば、お客さまから要求でもされない限り、見積書には最低限のこと(料金の合計金額)しか書かなくなります。
「営業さん」はあまり多くを語りたがりませんが、見積書には、この記事に書いたような裏事情があります。
しかし、お客さまの立場からしたら、何が書いているのかわからない不透明な見積書など、とんでもない話です。
見積書は、お客さまにとっては、大事な交渉材料のひとつです。
なるべく引越しの料金を安く抑えるためにも、最低限、この記事で触れた6項目は、しっかりと確認し、見積書に明記してもらうようにしましょう。
- 荷物の量=トラックの容量
- 当日のスタッフの人数
- 使い捨ての新品の資材の値段
- 引越し業者との作業分担
- 家具・家電製品の分解・組立て費用
- オプション作業と料金・費用・価格