「念願の新築分譲マンションを購入したのはいいけれど、一斉入居?っていうの?アレ、いろいろと制約があってビックリ。こんなんでちゃんと引越しできるのかなぁ」と思ってませんか?

こんにちは。新築分譲マンションの一斉入居でシッチャカメッチャカした現場に馴染めない、元引越し業者スタッフの管理人です。

新築分譲マンションへの引越しプラン・パックは、他の引越しのプラン・パックとは、大きくことなる、非常に特殊な引越しです。

特に、他のマンションの住人の方が、大勢で一定の期間に一気に引越しするため、「一斉入居」ともいわれます。

特徴としては、日程、時間、引越し業者など、さまざまな条件が制約される反面、比較的高品質で、クレーム対応もスムーズなプラン・パックです。

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新築分譲マンションへの引越しプラン・パックは「一斉搬入」だけ

人差し指を立てる引越し業者営業員

「一斉入居」ではマンションの住人が一斉に引越ししてくる

新築分譲マンションへの引越しは、通称「一斉入居」といいます。

これは、文字どおり、マンションの住人が、短期間で一斉に入居してくるために、呼ばれています。

なぜ短期間に引越しが集中するのかというと、次のような事情があります。

  • お客さまの側の「早く引越しをしたい」という事情
  • 引越し業者の側の「短期間で引越しを済ませたい」という事情

お客さまは早く新築分譲マンションに引越しをしたい

まず、お客さまには、「早く引越しをしたい」という要望があります。

これは、新しく購入した分譲マンションに、早く移って新生活を始めたい、という純粋な心理があります。

これに加えて、引越し元(旧居・積地)が賃貸物件のお客さまにとっては、賃料(家賃)の支払いがあります。

1日引越しが遅くなると、それだけ日割りの賃料が発生します。

ただでさえ引越しでお金がかかるのに、待てば待つほど、無駄な賃料が発生します。

このような事情があるため、新築分譲マンションを購入したお客さまは、我先にと引越しをしたがります。

引越し業者は短期間で一気に引越しを済ませたい

次に、引越し業者には、なるべく短期間で一斉入居を済ませたい、という事情があります。

ほとんどの一斉入居では、「幹事会社」と呼ばれる1社の引越し業者が、独占状態で新築分譲マンションの引越しを請負います。

この幹事会社の引越し業者としてみれば、一斉入居は、会社の売上を一気に増やせる絶好のチャンスです。

通常の引越しに加えて、一斉入居まであるのですから、なるべく隙間なく引越しを詰め込んで、短期間で一気に稼ごうとします。

また、新築分譲マンションは、内外の壁・床・エントランスやエレベーターの養生を徹底しなければなりません。

ただ、いつまでも、養生をしているわけにはいきませんので、養生がしてある間に、一気に引越しを終わらせようとします。

異常に多い新築分譲マンションへの一斉入居の制約

困る主婦

短期間に引越しを終わらせるためにさまざまな制約がある

このように、新築分譲マンションでは、短期間に引越しが集中します。

数百戸もあるような大規模マンションの引越しも、一斉入居では、わずか2ヶ月程度で終わらせます。

当然、これだけ一気に引越しをするのですから、「異常」といってもいいくらい、制約が多いです。

新築分譲マンションへの一斉入居では、この制約を理解しながら進めないと、面食らったらり、下手したらスムーズに引越しが進まない可能性もあります。

【制約1】スケジュールの選択肢が異常に少ない

すでに述べたとおり、新築分譲マンションへの引越しでは、他の住人の引越しと日程が重なります。

となると、お客さまお一人の事情で、自由に日程を選ぶ、というわけにはいきません。

もちろん、引越し業者が勝手に引越しの日程を決めるわけにはいきませんので、ある程度の選択肢は提示してくれます。

ただ、他の通常の引越しのプラン・パックに比べると、明らかに選択肢は狭いです。

引越し先(新居・卸地)に荷物を運び込む日程の選択肢が少ないのですから、当然、引越し元(旧居・積地)から荷物を運び出す日程の選択肢も限られてきます。

【制約2】作業時間は2時間程度に制限される

新築分譲マンションへの引越し(一斉入居)では、日程だけでなく、なんと引越しの作業の時間も制限されます。

管理人の一斉入居での経験では、たいていは2時間に制限されていました。件数は少ないですが、2時間半や3時間の場合もありました。

新築分譲マンションを購入するような、若い夫婦のお客さまががお持ちの荷物だと、2~3時間は、結構ギリギリの作業時間です。

このように、ほとんど時間に余裕がない中での引越し作業ですから、あせった引越し業者のスタッフによる事故のリスクがあります。

また、荷物の量が多いと、時間内に引越しが終わらない、ということもあります。

この場合は、階段で荷物を運ぶか、後日、改めて日程調整のうえ、荷物を運び込むことになります。

【制約3】使えるエレベーターと時間が制限される

新築分譲マンションへの引越し(一斉入居)では、部屋ごとに使用できるエレベーターが指定されます。

また、引越し業者のトラックを駐車するスペースも決められていて、そのトラックから、そのエレベーターに荷物を運ぶルートまで決められます。

こうしないと、エレベーターの「奪い合い」になってしまい、まともに引越しができません。

このため、エレベーターの使用や荷物の搬入ルートは、厳格に守られ、同じ引越し業者の違うチームであっても、融通をきかせることはありません。

ちなみに、このエレベーターもすでに述べたような、2~3時間の時間制限があります。

この時間制限を越えた場合は、もうエレベーターを使えなくなりますので、引越し会社のスタッフは、どんなに高層階の部屋だろうと、階段で荷物を運ぶハメになります。

中には、エレベーターを明け渡そうとしない引越し会社のチームと、次にエレベーターを使う引越し会社のチームとが、同じ会社でも口論となる場面もあるくらいです。

【制約4】使えるトラックが制限される

新築分譲マンションでは、敷地の特性上、トラックの使用に制限がかかる場合があります。

例えば、ほとんどの場合は、大型トラックのような重いトラックは、敷地の地面を痛めるため、使用できません。

また、都市部のマンションのように、駐車スペースが地下にある場合は、あまり背の高いトラックは使えません。

この場合、小さな複数のトラックに荷物を分乗させることになります。

こうなると、必要なドライバーの人数が増えてしまい、それだけ人件費が高くなることもあります。

さらに、背が低い渡り廊下があるような分譲マンションでは、地下の駐車場と同じように、背の高いトラックが使えません。

【制約5】引越し元(旧居・積地)での引越しプラン・パック

これは、厳密にいえば「制約」ではないのですが、引越し元(旧居・積地)での引越しプラン・パックも、ある程度制限されます。

すでに述べたとおり、新築分譲マンションでの引越し(一斉入居)では、日程と作業時間が、非常にシビアに限定されています。

引越しの作業は当然ですし、移動時間など、あらゆる場面で、遅れることが許されません。このため、引越し業者としては、作業に遅れが出るような事情を、徹底的に排除しようとします。

例えば、引越し業者は、お客さまによる梱包が終わらないリスクがある、いわゆる基本プラン(セルフプラン・標準プラン)の利用を嫌がります。

ですから、なるべく引越し業者が梱包する、プラン・パックを勧めてきます。

それも、時間が読みにくい当日の梱包(いわゆる「おまかせパック・おまかせプラン」)ではなく、前日までに梱包をするサービスを勧めてきます。

また、朝一番に新築分譲マンションに引越しする場合は、当然、当日の朝に引越し元(旧居・積地)で荷物の運び出しをしても間に合いません。

この場合は、前日の夕方以降に荷物の積込みをする、いわゆる「宵積み」をしなければならない場合もありあす。

新築分譲マンションへの一斉入居は「幹事会社」が仕切る

幹事会社の営業員

不動産業者指定の引越し業者=「幹事会社」

新築マンションの一斉入居では、不動産業者などから、引越し業者を指定または紹介されます。

この不動産業者から指定された引越し業者を「幹事会社」といいます。

幹事会社が指定された場合は、幹事会社が提供する引越しサービスを利用するのが一般的です。

もちろん、他の引越し業者を絶対に利用できないわけではありませんが、デメリットが多いため、あまり現実的ではありません。

幹事会社が新築分譲マンションの一斉入居を独占的に仕切る

幹事会社は、基本的には、一社でその新築分譲マンションの引越しをすべて取扱います。

幹事会社一社が新築分譲マンションの引越しを独占することで、さまざまなことを効率的におこないます。

たとえば、日程調整、マンション内外の一社での養生、各支店間の連携、お客さまへの営業、引越し資材の調達などがあります。

このように、一社が独占的に仕切ることで、多数の引越し業者が担当する場合よりも、一斉入居は、効率的に進んでいきます。

こうした事情があるため、大規模な新築分譲マンションでは、ほとんどが幹事会社が指定されます。

幹事会社が指定されると価格交渉はできないが引越しの料金・費用は高からず・安からず

もちろん、事実上は幹事会社だけが引越しをするのですから、他の引越し業者との相見積もりができません。

このため、価格競争はできませんし、引越し業者の営業員から提示された引越しの料金・費用を下げることは難しくなります。

また、引越しが済んだ後で、マンションの住人の間で、引越し料金・費用に差が出ていると、あとでクレームや値下げ要求になりかねません。

その意味でも、あまり料金・費用は安くなりません。

ただ、引越し業者としては、営業経費があまりかかりませんので、あまり高額な料金・費用にはなりません。

特に、あまりにも高い金額の引越し料金・費用を「吹っかけて」しまうと、お客さまの不満が不動産業者の方に向いてしまうことがあります。

こうした点からも、引越し業者は、あまり高い引越しの料金・費用を提示してきません。

不動産業者から引越し業者を紹介される場合は通常どおりの引越し

不動産業者から引越し業者を紹介される場合は、その紹介された引越し業者以外でも、利用することもできます。

幹事会社が選ばれず、「紹介」程度で済むのは、比較的小規模なマンションです。

紹介される引越し業者以外にも利用ができるということは、通常の見積もりとあまり変わりません。

ですから、一括見積もりサービスや相見積もりによって、価格競争をしてもらい、引越しの料金・費用を安くすることもできます。

一斉入居は通常の引越しよりも待たされるが高品質

台車

待ち時間が異常に長くなることも

すでに述べたとおり、大規模な新築マンションの一斉入居では、指定された時間以外は、エレベーターを自由に使うことができません。

もちろん、1階の部屋のようにエレベーターを使わない部屋や、2階の部屋のように階段で作業できる部屋では、特に制約はありません。

それ以上の階層の部屋では、エレベーターの指定時間がくるまで、事実上、荷物を運び込めません。

通常、新築分譲マンションへの一斉入居では、遅刻が許されないため、引越し業者は、余裕をもって引越し元(旧居・積地)での作業を終わらせます。

ですから、場合によっては、お客さまが新築分譲マンションに到着してから、数時間も待たされることもあります。

状況が噛み合えば短時間で安心・安全な作業が期待できる

ただ、引越し業者のスタッフも、黙って待っているわけではありません。

新築分譲マンションでの一斉入居では、作業終了時間が指定されるため、急いで作業を終わらせなければなりません。

ですから、幹事会社は指定されている場合は、その幹事会社は、同じ現場で手が開いているスタッフと台車を、1件の引越しに集中させます。

そして、いざ荷物を運び込むときは、列をなした台車に荷物を一斉に積込み、エレベーターをフル稼働させて、一気に引越しを終わらせます。

もちろん、これは、それだけの人数の幹事会社のチームがいればの話です。

いくつものチームが引越しの現場にいた場合は、チームの数だけのチームリーダー・サブリーダーが現場に入ってくれます。

こうなると、事故の可能性はほとんどありませんので、安心して作業を見ていられます。

新築分譲マンションの引越しのクレームは不動産業者まで

怒る主婦

新築分譲マンションでは事故率が上がる

すでに述べたように、新築分譲マンションでは、引越し作業に2~3時間という制約があります。

この時間は、一般的な新築分譲マンションを購入される、若い夫婦のお客さまがお持ちの荷物の引越しの時間としては、ギリギリの時間です。

かなり効率よくエレベーターを動かさないと、時間どおりに終わらないこともあります。

このため、チームリーダーやトラックのドライバーは、内心では焦りながら、慌ただしく作業をします。

その結果、事故につながることがあります。

このため、新築分譲マンションでの一斉入居では、通常の時間の制約がない引越しに比べて、事故率が高いといえます。

参照:ダントツに不自由な引越し―新築マンションへの引越し(一斉入居)の特徴と注意点

引越しの事故は「不動産業者」にクレームを入れるとスムーズに進む

新築分乗マンションの一斉入居で事故が発生した場合、引越し業者と直接交渉すると、通常の引越しの事故と同じように、そう簡単に補償交渉はまとまりません。

ところが、引越し業者と交渉せずに、マンションの販売を担当した不動産業者にクレームを入れて交渉すると、意外にスムーズに話が進むことがあります。

不動産業者としては、クレームが入ることで、指定や紹介した引越し業者の実力を知ることができます。

この結果、事故、トラブル、問題が多いようだと、次回の新築分譲マンションからは、別の引越し業者を指定・紹介しようとします。

引越し業者としては、指定・指名から外されると、大幅な売上ダウンにつながります。

このため、次回以降の一斉入居で指定・紹介してもらうために、比較的穏便に済ませてくれることがあります。

まとめ

いかがでしたか。最後にもう一度、新築分譲マンションへの一斉入居のプラン・パックの特徴を確認しておきましょう。

  • 新築分譲マンションへの引越しは、実質的には一斉入居のしか選べない。
  • 一斉入居では、日程、作業時間、エレベーターの使用時間、マンションによっては使うトラックが制限される。
  • 場合によっては、引越し元(旧居・積地)の日程や引越しプラン・パックですら制限される。
  • 大規模なマンションでは、一社独占の引越し業者「幹事会社」が、原則としてすべての引越しを仕切る。
  • 幹事会社の引越しの料金・費用は高からず安からず。
  • 新築分譲マンションへの一斉入居は、長時間待たされる可能性が高い
  • 新築分譲マンションへの一斉入居は、うまくハマれば高品質・安全・安心で、短時間で終わることもある。
  • 時間の制約がある新築分譲マンションへの一斉入居では、事故率が上がる。
  • 新築分譲マンションでの引越しの事故は、不動作業者をとおして補償交渉をする。

「いくらすると思ってんだ!ベンツ1台分だぞ!?どうすんだよッ!!」

ある朝、管理人が出勤した引越し業者の支店では、支店長が怒鳴り散らしていました。

当時、その支店では、ある大規模な分譲マンションの一斉入居の最中でしたが、おそらく、何かあったのだろうとは思いました。

こっそり先輩に事情を聞いてみると、他の支店のチームが、渡り廊下にトラックの上の部分を衝突(接触ではありません)させてしまった、ということです。

それで、修理代が「ベンツ1台分」だった、ということです。

何も他の支店のチームがやったことなのに、そこまで怒らなくても…、とは思いましたが、おそらく、担当支店の支店長として、なんらかの責任を取らされるのでしょう。

これは極端な例ですが、新築分譲マンションの一斉入居は、とにかくバタバタしていて落ち着かず、管理人はあまり馴染めませんでした。

お客さまからも、細々としたクレームが多く、明らかに顧客満足度は低いと感じています。

本文でも触れたとおり、特に、賃貸物件に住まれているお客さまにとっては、1日でも早く引越したほうが、その分賃料を払わなくていい、という事情があるのでしょう。

ただ、焦って引越しをした結果、いろいろと細かな事故が発生して、結局、大変な目に遭うこともあります。

いくら一斉入居とはいえ、期間の後半のほうになってくると、引越しの件数も落ち着いてきます。

こうなると、幹事会社でなくても、そこそこ安い料金・費用で対応してくれる引越し業者も出てきます。

ですから、特に賃貸でない物件にお住まいの方などは、あまり焦らずに、後半の引越しが落ち着いた日に引越しをしてみてはいかがでしょうか。

もちろん、幹事会社を含めて、相見積もりを取ることを忘れないでください。