「はやりのシェアリングサービスでトラックの荷台をシェア!!…みたいなサービスってないの?」
こんにちは。トラックのドライバーになりたての頃は、長距離混載便の引越しに駆り出されてばかりだった、元引越し業者スタッフの管理人です。
長距離混載便は、大型の物流用のトラックに、複数(2~3世帯)のお客さまの荷物をまとめて、一緒に運送するプランです。
特徴としては、運送にかかわる経費(高速料金・燃料代・ドライバーの人件費)を大勢のお客さまみんなで分担する点があります。
これにより、料金が割安になる、というメリットがあります。
他方、大手の業者しか取り扱っていない、引越し作業に時間がかかる、荷物が紛失するリスクがある、タイミングよく複数の利用者の荷物を混載できない場合が多い、などのデメリットもあります。
引越しの荷物を他人のものと一緒に大型トラックに積み込むプラン
大型トラックに引越しの荷物をまとめて運送
長距離混載便は、大型のトラックの荷台に、複数のお客さまの荷物をまとめて積み込んで運送するプランです。
このため、自社の大型トラックを運用できる引越し業者、特に物流を手がける大手物流兼業業者によって提供されているプランです。ある意味では、大規模な物流拠点や運送システムを持つ大手物流兼業業者ならではのプランといえます。
また、大手引越し専門業者も自社のトラックや外注のトラックを使うことで提供していることがあります。
この場合は、一般家庭向けの長距離混載便である場合がほとんどです。
なお、大手引越し専門業者は、長距離混載便のうち、単身パックについては、扱っていないところが多いです。
長距離混載便のメリット
経費をシェアして割安に
長距離混載便は、中型・大型(通常は10トン以上のトラック)のトラックに荷物を混載します。
これにより、トラック1台あたり、ドライバー1人あたりの荷物の積載量を増やし、荷物量あたりのさまざまな費用(高速料金・燃料代・人件費)を節約します。
また、長距離混載便では、複数の引越しお客さまが荷主となりますので、これらのさまざまな費用をそれぞれのお客さまで分担することになります。
これにより、個々のお客さまの料金が安くなります。
引越しの料金の大半を占める必要経費は、高速道路の料金・燃料代・ドライバーの人件費などです。これらの経費は、通常、削ることができません。
ところが、長距離混載便では、これらの費用を複数のお客さまで分担することで、安く抑えることができます。
これは、他の引越しのプラン・コース・パックでは得ることができない、混載便ならではのメリットです。
大手物流兼業業者・大手引越し専門業者のプランでなければメリットが薄い
ただし、これは引越し業者が自社で大型のトラックを運用しているからこそ実現できるものです。
この大型のトラックの運用を外注している場合は、別途で外注費がかかるため、あまり安くはなりません。
このため、自社の大型トラックで物流を手がけている大手物流兼業業者でなければ、それほど料金は安くなりません。
また、大型のトラックは住宅街に入り込めないため、本来の引越しの運送には向いていないトラックです。
ですから、通常、引越し専門の業者は、大型のトラックは使いません。
つまり、引越し専門業者は、長距離混載便のサービスをそもそも提供してません。
仮に提供していたとしても、大型トラックの運送を外注で提供しているため長距離混載便でもあまり安くない、ということになります。
ただし、大手引越し専門業者のように、大手の会社の場合は、物流部門があったり、物流子会社を持っていることがあります。
この場合は、大手物流兼業業者と同じくらい料金が安い長距離混載便を提供していることもあります。
長距離混載便のデメリット
意外と作業に時間がかかることもある
長距離混載便は、次のいずれかの方法で荷物を積み込みます。
- 荷物を搬出する建物に大型のトラックを直付けする
- 小型・中型のトラックにすべての荷物を積み込み、引越し業者の店舗などで荷物を積み替える
- 小型のトラックにいったん荷物を積み込み、そこから離れた場所で何回か大型のトラックに荷物を積み替える
上記のうち、1番目と2番目の方法による引越し作業にかかる時間は、通常の荷物の積み込みと変わりません。
問題は、3番目の方法です。
3番目の方法は「大型トラックを建物に直付けできない。かといって、一回で全部の荷物を積み込めるだけの中型のトラックが手配できない。
…そういう状態(=主に繁忙期に発生する事態)に、やむを得ない方法としておこなわれます。
この方法は、「いったん小型トラックに荷物を積み込む→大型のトラックが待機する場所に移動する→荷物を載せ替える→戻ってくる」という流れを複数回することになります。
このため、非常に時間がかかる、というデメリットがあります。
繁忙期の長距離混載便はサービスの品質に問題あり
上記のとおり、このような状態は、主に繁忙期に発生します。この状況は、以下のようなリスク・デメリットがあります。
- 小型のトラックを使用している(中型以上のサイズのトラックはベテランのドライバー・リーダーが使用する)=荷物の量に対して経験が浅いドライバー・リーダーが担当する
- 通常の引越しとは違い、変則的な引越しであるにもかかわらず、経験が浅いドライバー・リーダーが担当する=作業に時間がかかる
- 大型トラックのドライバーは引越しの経験がない、または浅いことが多く、引越しの荷物の積み込みに慣れていない=荷崩れのリスクがある(引越し業者のドライバーも経験が浅いためそのリスクを指摘・認識できない)
- 大型トラックのドライバーはスタッフの人数にカウントされているにもかかわらず、いろいろと理由を付けてトラックから離れない=スタッフの人数・料金の割に時間がかかる
- 長距離の移動の場合は使い捨ての資材で家具・大型家電製品を梱包する=梱包の技術が低い・経験が浅いリーダーでは事故のリスクがあり、また時間がかかる
このため、繁忙期に長距離混載便を利用する場合は、最低限、時間がかかることは覚悟しなければなりません。
また、事故のリスクについても、事故の予防や、事故が起こってしまった場合の補償などにも備えないといけません。
なお、これらのリスクは、混載便に限らず、大型トラックへの載せ替えがある引越しにもあります。
特に、明らかに外注の運送業者の大型トラックを使う引越しに、同じようなリスクがあります。
ほとんどの場合は繁忙期にしか利用できない
このような事情があるため、繁忙期の長距離混載便は避けるべきなのですが、そもそも混載便(単身パックを除く)は、繁忙期以外にはほとんど利用できません。
というのも、混載便は、次の2つの条件をすべて満たしていないと発生しません。
- 2人以上の同じ引越し業者の利用者が、「たまたま」同じ日(せいぜい1~2日違い)で荷物の搬出・搬入する
- 2人以上の同じ引越し業者の利用者が、「たまたま」近い場所(またはトラックの移動途中の場所)で荷物を搬出し、「たまたま」近い場所(またはトラックの移動途中の場所)で荷物を搬入する、
このような条件を満たした引越しは、繁忙期=引越しの件数が多い時期に、しかも比較的需要が多い場所=都市間の引越しでしか発生しません。
つまり、決して狙って利用できるプランでないということです。これも、ある意味では長距離混載便のデメリットといえます。
ですから、利用できればラッキーともいえますが、上記のようなリスク・デメリットを考えると、必ずしもラッキーとはいえません。
荷物の混在・紛失に注意
長距離混載便は、トラックの荷台で他人の荷物と混じる可能があります。
引越し業者としても、荷物の間仕切りをしたり、カーゴをラップで包んだりと、さまざまな対策をしていますが、それでも完全に防ぐことができるものではありません。
また、場合によっては、引越し業者や物流業者の店舗で荷物を積み替えることがあります。
このようなトラックの荷台で荷物が混じることによる荷物の紛失や、積替え作業の際の荷物の紛失も、長距離混載便のデメリットです。
このため、荷造りの際に荷物に通し番号を付けてリストを作成するなどして、事前に荷物の紛失の対策を施す必要があります(通常は、引越し業者がそのようなリストを用意してくれます)。
まとめ
長距離混載便は、料金の面ではメリットが大きいのですが、その割にはデメリットが多いプランです。
狙って利用できるわけでもありませんので、非常に扱いが難しいプランです。
ある意味「玄人向け」のプラントといえます。
時間がかかる場合はやむを得ないとしても、荷物の破損のリスクを抑えるという点では、小型の荷物の梱包プランを利用する、という手もあります。
しかし、それでは割高になり、せっかくの長距離混載便のメリットを活かすことができません。
このため、荷物の梱包(または引越し業者との補償交渉)に慣れている場合以外は、積極的には利用しにくプランです。